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Last Update:2019/6/13
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コラム 中国ビジネス噺

第11回 中国での紛争解決(3)

(2019年6月13日)

  中国における紛争で一番厄介で会社の存続にかかわる問題は、合弁パートナーとの経営をめぐる紛争でしょう。
  中国で会社を設立する場合、業界への参入に際して政府から現地の同業企業を紹介され、合弁企業としてスタートするケースは多いのが現状です。
  もし、この合弁パートナーとの間に経営方針の違いなどで意見の食い違いが起こり、修復できなくなった場合どうしたらよいのでしょうか。
  現実にあったケースですが、経営問題が深刻な状況になり、このまま合弁を継続しても双方のメリットにならず、特に日本から投資した企業としてはグループ全体への影響も無視できない状況となりました。そこで数年続けてきた合弁契約を解消して独資企業となり再出発することを目指し行動を起こしました。
  中国の合弁パートナーは当然国有企業です、仮に株式会社となっていても株主の大半は政府関係機関が持っているという、事実上の国有企業である場合が大半でしょう。
  従って、このような日本側の動きに対して政府側が黙っていないことになります。特に合弁解消ということになると、パートナー企業の値打ちについては国有資産管理局といった組織が関与します。企業同士の調整は対外経済貿易委員会という組織に管理責任があるのです。
  日本側としては、企業同士の話というより、地域または当該開発区などを管理するこれらの政府機関との交渉になるのです。
  相手国でのこのような交渉は、日本サイドだけではなかなか対応が難しく、国情の理解と専門知識が必要となるために、日中両サイドに拠点を持つ弁護士事務所を代理人として立て交渉を始めました。
  最終的には交渉は決裂し法廷での争いに発展しました。ここでの選択は現地の法院で民事訴訟を提起するのではなく、より公平性があると言われている「仲裁」を申請することとしました。
  これは、合弁契約時の定款に、紛争の際には「中国国際貿易仲裁委員会」に付託する規定を設けていたことによるものです。
  国際ルールで設けられている「仲裁」規定は、名簿の中から双方それぞれが仲裁委員を1名づつ指名し、仲裁委員会が主席仲裁委員を選ぶというルールで開始されます。
  この方式は、仲裁委員の国籍も多岐にわたり自由に指名することが出来ることや、現地の法院での判決に比べ、裁定がどちらかに偏ることが少ないというメリットが期待されます。実際には仲裁廷は2回開かれ、期間も1年近くかかりましたが決着を見ました。
  仲裁には期間の限度や、裁定に関して事後に同様の裁判が行えない等の制限が有る他、裁定の履行に関しては当事者の責任に帰し、不履行の場合は白紙になるなど特殊なものですので、最後の履行までのストーリーを確実に描くことがポイントといえるでしょう。

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