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LastupDate:2010/3/10
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第158回 国際商事紛争解決に利用可能性が増す仲裁

(2010年3月10日)

  対中事業展開をしている外国企業が中国企業との間で商事紛争が発生した場合、その解決手段として、中国における渉外仲裁(国際商事仲裁)の利用価値が高まってきているようだ。
  国際商事仲裁とは、紛争当事者が、当該当事者間の渉外的要素のある契約性および非契約性の商事法律関係にかかわる紛争を中国の国際商事仲裁機関に申し立て、当該機関が紛争の是非を判断し、裁定することである。
  中国における国際商事仲裁機関として重要な機能を果たしているのが、中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC。本部:北京市)である。
  CIETACは、このほど2009年の受理、結審状況を発表した。このCIETACの発表を見ると、最近の国際商事紛争の傾向およびCIETACの利用価値が高まっている理由が見えてくる。以下、CIETACの2009年の活動を概観する。
  CIETACが、2009年に受理した仲裁事案件数は1482件と前年比252件、20.5%増加した。うち渉外事件は559件、前年比11件、2%増であった。なお、渉外事件という概念は、一般には「国際」と同義と解される。「国際」とは、主体、客体、内容のうち何れか一について、中国内地の外の法域とかかわりがあることである。ただ、中国の場合、香港、マカオおよび台湾地区について、中国内地の外の法域にあるということで処理しているので、「国際」ではなく「渉外」という言い方をしている。
  渉外紛争の内容は、一般商品貿易、合弁事業、建築、工事請負、不動産開発、金融取引、株式譲渡、ライセンス供与、船舶リースなどの契約にかかわる紛争が多いが、このほかに最近の傾向として合併、著作権、物流、フランチャイズ経営、リース契約、造船などにかかわる紛争が出現している。 取引の形態が多様化し、外国企業が中国市場において事業展開を活発化させていることが窺える。
  紛争当事者は、54カ国・地区にのぼり、双方当事者が外国、香港、マカオ、台湾企業であるという事件も33件あった。
  仲裁は、契約の各当事者が、契約から生じ、または契約に関連して生じた紛争を仲裁により解決しようという意思を表明する当事者間の仲裁合意がなければ行うことができない。そうであるので、仲裁を行う場合には裁判と異なり、当事者が仲裁方式などにについて任意に合意することができる。そこで、CIETACが受理した事案の中には、仲裁合意において、当事者が仲裁方式、仲裁人の国籍、仲裁地および開廷地について特段の約定をするケースが32件あった。このように特段の約定がなされることも増えつつある。こうした中、仲裁人の選定に際して、外国人が仲裁人となる割合も増えつつある。現在、CIETACの仲裁人として登録されている外国人は、276人いる。
  仲裁における使用言語も中国語以外の言語を指定するものが77件あった。この中では英語または英語と中国語の両方の言語を指定するものが多い。日本語を指定する事案も出現している。国内の事案であっても外国語が指定されたケースもあった。
  CIETACの仲裁実務上は、なお改善する余地が多くある(紙幅の都合上、叙述しない。)。それでもなお、以上の2009年の活動実績から見ると、当事者の仲裁合意により、利用可能性および価値は、以前より増してきているものと評価できそうである。


次回は3月24日(水)の更新予定です。

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