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(2015年09月24日)
信訪制度の目的は、公共政策、社会安全、法治制度の確立であるという。信訪制度は、政府機関が社会矛盾を解決しようとする上で機能させようとし、市民もこれを活用しているようである。しかし、現実には混乱がありそうである。第一に、(1)裁判権との関係があり、第二に、(2)信訪制度自体に内在する矛盾もある。 現在、全国の31省・市・自治区に信訪条例が存在し、2,800以上の県級以上の政府に信訪機関が設置され、4万の郷政府に信訪公務員が置かれている。このことからすると公式な行政相談制度と言えるだろうが、隣接する機関や制度との振り分けが明らかではないと感じられる。 隣接する制度とは、行政訴訟、行政不服審査である。これとの関係はどうか。苦情申立ては、第一には所轄行政官庁になされるものではないか。行政訴訟、行政不服審査では処理できないものが信訪の対象範囲になるのか。実務上は、このような区別はない。市民は、行政訴訟、行政不服審査または信訪のいずれの手段も採ることができる。また、行政訴訟または行政不服審査によって主張が認容されなかった場合に信訪の手段を採ることができる。すなわち、裁判を行って、敗訴した場合に政府の信訪機関に申立てるということも可である。この場合、信訪機関はこの申立てを受理し、裁判所の判決を覆すことがある。そうであるとすれば、司法の権威はどうなるのだろうか。 信訪制度自体を再構築する必要もあると考える。信訪制度は、政府および公務員に対する不服申立て、提案、提言を主とするのがいいのではないだろうか。市民の行政への参加を促す制度としての活用が適当ではないかとも考える。そこで、信訪機関は、以下の業務を主体に考えてはどうだろうか。 (1) 民意・情報収集機能:信訪を通じて民意を知るために信訪制度は、情報収集の役割を第一に考えてもよいのではないだろうか。 (2) 権力監督機能:市民は信訪を通じて公権力を監督するという機能がある。そうであると民間当事者間の紛争処理は、裁判、仲裁、調停に委ね、信訪は日本の行政相談のような問題を扱うことを主とし、市民の意見を政策に反映させる方向に向かうのが良い。 中国社会は、都市化、工業化、グローバル化、情報化社会という大きな転換期にさしかかっている。急速な発展が一気に押し寄せる中で、社会の矛盾・紛争も出てくる。現段階の中国において社会の安定は大きな意味を持つ。そうであるとき今後、信訪制度はさらに重要になる可能性がある。この場合、法治を推進するようにならなければならず、公権力のコントロールのための法治化をしなければならない。現行の信訪制度には司法権を超越するようなことがあり問題があると考えられる。国家管理システムを改善する手段としての機能を充実させるのが良さそうである。
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