★バックナンバー一覧
(2016年8月15日)
筆者が大学院で指導する院生の一人に中国人留学生のXu氏がいる。Xu氏は、中国におけるクール宅急便の発展可能性について研究し、修士論文を書いている。論文では、日本でクール宅急便が発生した時の経済発展段階と今の中国経済の発展段階の比較をし、同時に日本人と中国人の食文化の比較もしつつ、中国におけるクール宅急便導入のための政策提言をし、日本企業にはビジネス・チャンスのつかみ方の提言をしようとしている。 このXu氏は、日本企業への就職を希望し、今、就職活動に追われているが、なかなか厳しい現実に直面している。 外国人・留学生の就職を支援するという東京外国人雇用サービスセンターに行っても募集自体が多くないようである。また、同センターの相談員から言われたところでは、就職しても大学院における専門と就職先の業務が一致していない場合には就業ビザが取得できないそうである。実際に入国管理局で20%の留学生が、就職しても就業ビザ申請が認められていないという。 筆者の学部ゼミ生L氏(4年)は、企業への就職はせずに自ら起業することを計画している。日本人だと1円で会社が設立できるが、外国人は最低資本金500万円が要求される。L氏は、着々とこの準備をしているところである。 日本に留学し、かつ日本企業に就職しようという留学生は、親日派である。彼らは日本の企業文化も理解し、自国の企業文化との比較をし、共通点と相違点を知っている。中国ビジネスを展開しようとする企業にとっては有用な人材である。彼らの就職がままならない日本の留学生受入れ制度とは一体なんなのだろうか。外国人観光客の誘致には熱心だが、留学生活用の方途も考えるべきであろう。 日本企業は、中国においても人材採用で苦戦している。10年くらい前までは外国企業に就職したいという中国人が少なくなかったが、最近では中国企業(内陸資本)の企業への就職希望の方が増えているようである。 国内企業(国有企業と私営企業)と外資企業の賃金格差が少なくなったところ、国内企業、とりわけ国有企業は社会保障、キャリアパスなどの面で外資企業を上回る条件が与えられている。中国企業の知名度が高くなり、外資企業に肩を並べるようにもなっており、大学生やその両親らが世界的に著名な外資企業に勤めているという見栄もなくなっている。 このような現状であると、日本企業は人材採用について従来のように安い人材を採用しようというよりも、長期的投資として人材を見る必要があり、このための人材採用戦略、人材登用戦略をよく練る必要がある。
※サイトの記事の無断転用等を禁じます。