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Last Update:2017/12/13
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

 第345回 地下銀行による資本流出問題

(2017年12月13日)

  2017年11月22日に広東省韶関市の地下銀行(中国語で「地下銭庄」という。)が摘発されたというニュースが報道された(法制日報 2017年11月22日)。
  報道によると、中国警察は、被疑者7人を拘束し、20数省の1万人以上が148の違法・不正口座を開設し、ここから200億元を海外送金していた。韶関市公安局は、11月9日に当該口座の残高3,000万元の資金を凍結した。不正口座の開設に際して、200人余の身分証明書が不正に売買されたり、窃盗にあったりしていた。
  このような地下銀行を通じた海外送金はとどまることがない。公安部の統計によると、地下銀行で取引された金額は、2016年には9,000億元以上にのぼるという。こうした資金は、海外で開設した個人資産の逃避用の口座に送られ、また、海外不動産など高額商品の購入や賭博などに使われている。
  最近では、ビットコインを用いて人民元をドルに交換する動きも急である。2016年11月の世界のビットコイン取引は15兆円超と過去最高を記録したとき、中国が9割を占めたという。
  中国政府は、1997年のアジア通貨危機および2008年のグローバル経済危機に対応するために、資金の国外送金をかなり厳しく規制してきた。中国人個人が海外送金できる金額も年間5万ドルまでとした。企業の正当な投資の場合であっても不動産投資、レジャー施設への投資などについては、中国経済、とりわけ製造業への貢献度の低さから抑制することをしてきている。
  しかし、さまざまな抜け道や不正手段がある。地下経済は、一般に先進資本主義国においては、GDPの5〜10%程度あり、発展途上国や後発国では、15〜20%あると言われる。中国に関する予測統計はあまり聞かないが、15%以上、場合によっては30%もあるのではないかと考えられる。
  地下経済が大きく存在するという問題の他に、中国経済に対する不安、人民元に対する信頼感の欠如など、総じていえば政府の政策に対する不安、不信感もある。
  反腐敗活動は、成果を上げているのかも知れない。しかし、反腐敗運動は、ともすれば政敵を追い落とすために使われがちであるようだ。地下銀行の存在などを許す根本的な問題の所在には、貧富の格差の拡大がある。貧富の格差が社会の不正、不安、不満を引き起こしていると言うことを忘れてはならない。
  「中国の抱える1つの矛盾は、名目的には共産主義の国家でありながら実際にはコーポラティズムの末期に資本主義的な国家に近くなっていることであり、これを鼓舞しているのは、ナショナリズムや国際社会で責任を担える一員と認められたい」ということである(ラナ・ミッター)。国民は華夷思想を持ち、国というよりは家族・民族のつながりに対する意識を強く持つところ、中国共産党のナショナリスト意識との乖離もあるだろう。

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