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Last Update:2018/4/25
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第354回 若者の起業意欲と現実のギャップ~国家信用保証基金の設立

(2018年4月25日)

  日本に留学中の中国人学生に将来の夢を聞くと、帰国して起業するという学生が随分と多い。しかし、現実に起業するには課題も多い。いかなる課題があるのか。
  1980年代以降の世代の起業は、主に新技術を活かしたベンチャー企業が多い。起業時および起業後に遭遇する課題は、(1)資金調達、(2)日々革新が行われている技術を常に追求し続けられる技術力があるか否か、(3)マネジメント能力、(4)マーケットの維持・開拓などである。とりわけ、資金調達面で困難にぶつかるようである。
  若者の価値観は、起業家でなくても単なる生活のための資金稼ぎ、高所得を得るということから、働きがい、社会価値の創造、社会貢献をしているという意識に移りつつある。そうであるから彼らが起業しようとする分野は、60、70年代の起業家が参入した不動産業、自動車製造業、インフラ建設などではなく、インターネット、AI、新領域の小売業、さらにはハイリスクの最新技術を駆使した医療分野などである。こうした分野は、市場参入のためのハードルが低く、市場競争が激しく、資本回収率が低いという問題がある。
  若い起業家には、銀行融資を受けようとする場合の担保もないので、資金調達がなかなかできず、創業しても事業を維持・拡大すること上で壁にぶつかるということがある。
  中国政府は、経済成長のために若者に限らず起業を促したいところである。農村振興のための新型職業農民の育成もこのような概念に含まれる。そこで、国務院常務委員会は、2018年3 月28 日に財政部と金融機関が提携して「国家融資担保基金」(信用保証基金)を共同設立することを決定した(新華社 2018 年3 月28 日)。
  計画では、第1期に600億元の資金を集め、株式投資、再保証などの方式で各省・市・自治区の信用保証業務を支援し、今後3年でおよそ500億元の貸付を保証するということである。この貸付規模は、既存の全国の信用保証業務の約4分の1に相当する。主な信用保証対象は、有効な担保がなく、銀行融資がなかなか受けられずに資金調達に悩む小企業である。これまでに地方レベルで同様の信用保証制度もありはしたが、資金規模も少なく有効な信用保証ができていなかった。国レベルで信用保証基金が行われれば、有望な小新興企業の資金調達難解決の一助になり、この支援を受けた企業が成功と遂げれば、商業資本も融資に向かうことになるかも知れないと期待される。

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