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第1008回 農村政策の動きから-その1-

(2022年2月24日)

 1978年に始まった改革開放の発端は農村にありました。農民の勤労意欲を阻害した、画一的なノルマ方式の人民公社を主体とする三級所有制を廃し、農家生産請負制を実施したことで、常態化しつつあった食糧不足は急速に解決され、また、農産物統一買い上げ制度が撤廃されて、農村市場システムが確立されていきました。これは郷鎮企業の勃興を後押しし、第一次産業と、第二次産業・第三次産業の連携を促しました。戸籍制度の改革に伴い、農民の出稼ぎが自由になり、様々な試行錯誤を繰り返しつつも、農村の余剰人口の都市化を進めるという流れも生んできました。また、2000年後には、農業税が廃止され、2600年も続いていた年貢が姿を消したこと、土地の所有権・請負権・経営権の三権分離が進められたこと、こうした経過を踏まえつつ、農村の新たな集団所有制が構築され始めたことも顕著な動きです。ただ、これには新たな収奪につながらない用心が求められます。       
 では実際にこれらの政策はどんな成果を生み出したのでしょう。レスター・ブラウンの指摘を契機に1990年代に巻き起こった食糧増産運動は大きな成果を上げる一方で大規模な自然破壊も引き起こしましたが、それらを克服しつつ、第13次5か年計画終了時(2020年)までには40年前と比べ生産量の倍増を果たし、肉や野菜などの副菜品はその生産量が世界一のゆるぎない座を確保するに至りました。その背景には、粗放的な農業から、集約的科学的な農業への転換がありました。農業の機械化が進み、ハウス栽培や水耕栽培が普及し、耕地灌漑面積も10億ムーを超えました。農業発展に対する様々な科学技術の貢献率は60%前後に達し、それに合わせ、大規模営農の組織化が進み、耕地請負面積は5億ムー前後に達して、新たな農業経営主体とそこで働く農民の数も急増しています。農民の収入も増加しました。収入の実質成長率は18倍に達し、エンゲル係数も、40年前の67.7%が31.2%にまで下降しました。それによって農村の貧困人口が急減し、2021年の全面的小康社会実現につながった、というわけです。もちろん、全面的小康社会実現はどこに基準を置くかという問題、一時的な貧困脱出から逆戻りする問題なども抱えており、すべてが万々歳というわけにはいきませんが、“三農政策”(農業・農村・農民)推進の成果が全体として奏功していることは明らかな事実です。次回はここ5年程の農業政策の具体的推移を。

次回は3月3日更新予定 テーマは<農村政策の動きから-その2->です。

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