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第1026回 ウクライナ戦争、中国とアメリカの算盤勘定

(2022年7月7日)

 ウクライナ戦争はアメリカにどんなプラスがあるのでしょう。この戦争でプーチンの野望が潰えればロシアの力を削ぐことができ、BRICSの一員で、ロシアとも親密な関係にあるインドやアジア諸国を引きはがし抱き込んで中国に対抗できます。また、ロシアやベラルーシを通る物流ルートが影響を受けるため、中国が急速に浸透していた中東欧諸国や、ドイツなど中国と経済的紐帯を強めていた西欧各国と中国との絆を弱め、更にNATOの結束と拡大やアメリカのLNGへの依存度の高まりでEUの第三極化も防げます。中国も欧州との経済的紐帯の弱化を補うため、日米との経済交流を修復せざるを得なくなるでしょう。また、ウクライナでロシアが失敗すれば、中国に台湾武力侵攻を思いとどまらせる圧力にもなります。そもそも新疆問題とウクライナ問題は、コンセプトの類似性から、対応を誤ればおしりに火が付き、中露関係にもひびが入るため、中国は「話し合いによる解決」を繰り返すしかなかったのです。一方、ウクライナ戦争はアメリカの軍需産業・エネルギー産業に膨大な利益をもたらし、バイデン大統領にとっても、アフガン撤退での失点を回復し、中間選挙までに人気を回復し、息子の疑惑をうやむやにもできます。       
 中国にとってはどうでしょう。対ロシア、ウクライナでは、双方に話し合いを求めつつ漁夫の利が得られます。ロシアから法外に安くエネルギーや食糧を手に入れられ、経済制裁を受けているロシアに対し輸出入を拡大もでき、一方、ウクライナからは引き続き様々な技術を導入できます。中国自身にとっては、上海協力機構やBRICSを通じて自身の発言権を高めることで、中国を中心にしたグローバルガバナンスの変革を進める絶好のチャンスになるし、ロシアや反米諸国へ一気に人民元決済を広め、元の地位を高めることができます。加えて、中国は西側諸国が自前の物流企業ではできにくくなるロシア領経由の物流経路(鉄道、航空)を使える優位性も見逃せません。また、もしロシアが頑張って戦争の膠着状態が続けば、米軍を東西に分散させ、東アジアにおける米軍の圧力を弱められるし、ロシアの化石燃料が手に入らない世界の国々には、環境問題に絡め、前述の太陽光パネルを大量に売り込むこともできます。ウクライナ戦争がどういう決着になれば、それぞれにどんな得失があるか、米中のみならず、日本も含めた各国が目を凝らしています。

次回は7月14日更新予定 テーマは<アグリテイメントの発展>です。

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