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第1027回 アグリテイメントの発展

(2022年7月14日)

 アグリテイメントとは今はやりの言葉。農業を娯楽と結びつけ、様々な農業体験や、農村の環境を利用した娯楽を楽しもうというもの。中国では長い間、農村と言えば飢えや貧困が想起されましたが、最近では小康社会の実現とともに、農村をアグリテイメントという新しい視点で見直し、そこに経済的価値も見出して農村を豊かにしようという動きが急速に強まっています。1990年代に生まれ、ここ10年ほどしきりに耳にするようになった“農家楽”(アグリツーリズム)はその象徴で、農家に立ち寄って農村の食事を味わうところから、最近では 農耕体験ツアー、農村文化ツアー、民宿なども盛んになっています。       
 中国の国内観光は交通インフラの拡充に歩調を合わせて飛躍的に発展し、特に2015年以降は農村レジャー観光の収入が年10%以上の成長率を示し、2019年の年間国内延べ観光客数は60億人を突破、観光総収入も6.63兆元に達し、1200万人の雇用を創出しました。2020年以降はコロナ流行の影響を受け、国内観光も大打撃を受けましたが、2021年の小康社会実現に向け、習近平は観光の果たす役割を重視し、観光産業を貧困脱出の重要なパワーと位置づけるよう呼びかけました。2020年の統計数字では、観光による貧困脱出人数が、貧困脱出者の17~20%を占めたとのこと。同年、農業農村部は「中国の美しい農村レジャー観光ツアー(冬季)お薦めコース60本」を発表し、さらなるテコ入れを図りました。
 一方、こうした発展の中で様々な課題も見えてきました。例えば、季節によって落差が激しく、数か月しか商売にならない地方も少なくありません。また、似たり寄ったりの観光アイテムが増え、他地域と差別化できない地域も増えています。質の向上と個性化は待ったなしの課題と言えましょう。2022年1月、国務院は<第14次5か年計画観光業発展計画>を発表しましたが、その中でも農村観光の規範に則った発展が謳われています。
 中国でも盛んになり始めた民宿。2020年2月、人民日報は、中国の潜在民宿需要に対する充足率は2019年時点でいまだ3%に過ぎず、発展の余地は大きい、という記事を掲載しました。その中では広東省が一番多く、北京市・四川省・江蘇省と続きました。また、女性が55.7%を占め、40歳以下が86.2%を占めるとも。農村観光が国内観光の主力になりつつある中、それぞれ工夫を凝らした多様な民宿も各地で続々と生まれつつあります。

次回は7月21日更新予定 テーマは<食の話題あれこれ>です。

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