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第1029回 障碍者対策の現状

(2022年7月28日)

 2022年1月国務院<国家身障予防行動計画(2021-2025)>の主要ポイントは、第一が予防知識の普及活動で、関連知識を医療従事者や介護者の職業訓練内容や教材に組み入れつつ、身障者になるきっかけを予防する宣伝活動に注力します。第二は発生予防への取り組みで、中国の成年身障者発生原因は56%が慢性病(高血圧・糖尿病など)に起因するため、食生活の改善、喫煙や受動喫煙の対策に力を入れ、ホームドクターの役割を重視します。第三は出産事故及び発育障害への対処で、婚前・妊娠前・妊娠中・産前産後のチェックを強化し、0~6歳児を重点対象に早期発見・早期治療・早期治癒を目指し、また、農村では近親結婚の回避を指導します。第四は事故による障害の防止で、特に幼児の事故と老人の転倒事故の防止に力を入れます。第五はリハビリ支援で、基準をクリアした施設の建設、リハビリ学部学科の新設による人材確保、精神障碍者・知能障碍者に対する地域サポートを強化します。       
 中国では、鄧小平氏の息子、鄧樸方氏が文革時の迫害で障碍者となったこともあり、1986年に国務院が“国連身障者十年”中国組織委員会を設立し国連の活動に参加、2000年には<新世紀身障者権利北京宣言>を発し国際社会に<身障者権利条約>の締結を呼びかけました。2003年の第58回国連総会が鄧樸方氏に国連人権賞を授与したのはその努力の表れでしょう。習近平氏の第二期政権がスタートした2017年以降、障碍者対策は加速し、李克強首相は2017年2月<障害予防と障碍者リハビリ条例>に、5月には、1994年に制定された<身障者教育条例>の大幅改定に署名、障害児の一般学校への進学の奨励、義務教育の確保、身障者教育の教員拡充を謳い、公務員への身障者の一定割合の雇用も始まりましたし、同年6月には、全国大学英語4級試験での点字受験も可能になりました。2018年2月、政府は、2016年に開始した身障者向け補助政策(貧困障碍者手当、重度障碍者介護手当)が県レベルで完了し、それぞれ1千万人に合計300億元が支給されるようになった、と発表しました。身障者の社会生活をサポートする動きも活発で、2020年には、3万余りの行政ネットが視覚障碍者の音声などによる自由な利用を可能にし、広州市などは最先端バリアフリー都市の建設を推進しています。また、北京パラリンピックを契機に、2022年3月、国務院は<中国身障者体育事業の発展と権利の保障>を発表、本格的な障碍者スポーツの育成にも乗り出しています。

次回は8月4日更新予定 テーマは<中国歴史学に関する最近の話題>です。

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