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第1030回 中国歴史学に関する最近の話題

(2022年8月4日)

 習近平氏の「偉大な中国の復興」というスローガンに呼応するかのように、近年の中国考古学学界では、中華文化の淵源を探求する研究・発掘が盛んにおこなわれ、紀元前2000年前後の夏王朝の誕生からさらに数千年を遡る発見も相次いでいます。これにつれ、中国史学会でも中国古代史研究が盛んになっていて、例えば、2019年8月26日人民日報掲載「新中国70年中国古代史研究の繁栄・発展」(卜憲群)は、最近の関連研究書を丹念に紹介しています。ただ、同氏は中国史学会副会長兼中国社会科学院習近平新時代中国特色社会主義思想研究センター研究員であり、その背景に政治的要素が絡んでいることは結語からも確かです。       
 時系列的な広がりとともに、中国の版図と辺境についての通時的・共時的研究も盛んになっています。考古学の面から言えば、陸のシルクロードと重なる河西回廊さらには中央アジアの線と面に関連する様々な発掘・研究は依然活況を呈しており、歴史から忽然と姿を消した楼蘭王国や西夏の研究の新たな進展は長江上流の三星堆同様、大方の注目を浴びています。西域に活躍した諸民族に関する発見も相次いでおり、2019~2021年にかけて発掘された甘粛省武威の吐谷渾王侯墓群からは、7世紀頃(唐代)の金銀の馬具が大量に発見されています。なお、吐谷渾勃興時、その北辺にあった楼蘭王国が時を同じくして消え去ったことは何らかの関係を思わせます。史学会でも呼応するかのように辺境史研究が進んでおり、2016年11月14日付人民日報は、「重点問題をしっかり把握し、中国辺境史研究を進めよう」(雲南大学方鉄教授)という一文を掲載しました。同氏はその中で「中国辺境と中国の歴史的版図を研究することは辺境統治に関わる歴史的問題を研究することである」と述べ、辺境地区の安定した発展の実現と、中国と隣国の関係の適切な処理に欠かせないと指摘しています。同日の人民日報は、中国社会科学院中国辺境研究所の馬大正氏研究員による「中国古代辺境統治研究」も掲載しており、やはり、その背景に政治的要請があることは歴然としています。
 こういった動きとは別に、純粋な学術的研究も進められています。西域と言えば、秦漢時代の西域経営がすぐ頭に浮かびますが、それを支えた交通の発展に関し王子今教授が2015年以降に出版した『秦漢交通史新智識』『戦国秦漢交通の枠組みと地域行政』『秦漢交通考古』『中国古代交通文化論叢』の4書は注目すべき成果と言えましょう。

次回は8月11日更新予定 テーマは<中国の宇宙開発、さらなるステップへ>です。

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