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第1034回 人権とプライバシー

(2022年9月1日)

 2020年8月、本欄933号で「人権擁護の取り組み」をテーマにコラムを書きました。丸二年を経て、事態はどう変化しているのでしょうか。
 933号で紹介したように、中国最初の人権白書が発表されたのは1991年。その後、2015年の白書では、発展の権利、人身の権利、民主の権利、公正な裁判を受ける権利、少数民族の権利、婦女・児童・老人の権利、身障者の権利、環境の権利、対外交流と協力の権利が明記され、2019年9月に中華人民共和国成立70周年を記念して発表された<新中国人権事業発展70年>でも、人民の、知る権利、参加する権利、表現の権利、監督する権利、教育を受ける権利、文化を享受する権利、民主的権利の保証が明記されました。しかし、中国における人権の保障は、あくまで「党の指導の下で」という大前提があり、「中国独自の人権とは生存権と発展権を主とする基本的人権である」ことから、2021年実現を目指した貧困撲滅と小康社会の実現が中国人権事業の最大の成果である、として喧伝されています。
 2021年8月13日付人民日報が、第10-11面全面を使い、国務院の<小康社会を全面的に構築:中国人権事業発展の輝かしいページ>と題する文章を発表し、貧困脱出と上述の様々な権利の保障を掲げたことはまさにその証左と言えましょう。同じ8月23日に、全人代常務委員会で採択された<中華人民共和国情報保護法>が掲載されました。その第2章「個人情報処理規則」では、一般的な規則に続き、信仰・健康・金融・所在などデリケートな個人情報の処理規則や、国家機関による個人情報処理特別規定が、また、第3章では、個人情報国外提供規則などが盛り込まれています。その中で、14歳未満の未成年に関する情報の保護が強化されたことは注目に値します。<2020年全国未成年者インターネット使用状況研究報告>によると、2020年の中国未成年者ネットユーザーは1.83億人、普及率は94.9%で、3分の一以上の小学生が就学前にネットを使用し始めており、ネットによる暴力や詐欺も多発しています。
 2021年9月、<国家人権行動計画(2021-2025)>が発表されました。そこには、経済・社会・文化的権利、公民の権利と政治的権利、環境権利、さらには少数民族・女性・児童・老人・身障者といった特定グループの権益の保障が記されています。共産党による一党独裁による「協商民主」という統治形態化でこれらをいかに上手く実現されるかが問われましょう。

次回は9月8日更新予定 テーマは<中医薬にまつわる新動向>です。

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