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第1107回 福建省の発展と台湾-その2-

(2024年2月16日)

 頼清徳氏が新総統に決まるまでここ数年、大陸側は、国民党の政権奪回を後押しすべく様々な方策を講じてきました。
 共産党政府は従来、台湾問題について、まず第一に平和統一・一国二制度という基本方針を掲げ、「九二共識」(1992年に中国側窓口機関海峡両岸関係協会と台湾側窓口機関海峡交流基金会の間で合意)で「一つの中国」を確認した後、民進党の陳水扁政権に対しては、2005年3月の全人代で「反分裂国家法」を採択、台湾が独立を宣言した場合、非平和的手段を取ることを合法化する、としました。2008年、国民党の馬英九政権が誕生すると、大陸側は三通(郵便・交通・通商の直通)による両岸関係促進を進め、一連の「台湾同胞」懐柔政策を展開、2015年にはシンガポールで習近平―馬英九首脳会談も実現しましたが、2016年にはまた民進党の祭英文政権が誕生、中台関係は膠着状態に入り、今回の改選に向け戦略の練り直しを迫られました。
 一方、経済交流はその間もますます発展し、2021年には両岸貿易額が3283.4億ドルと10年前に比べ倍増しました。政府は台湾産業界に対し優遇政策を次々と打ち出し、2021年3月には台湾資本が大陸の農業林業分野に進出することを促す措置(農林22条措置)を講じ、その後一年で1億元以上の資金援助を賦与、中国農村振興戦略の一端を担うよう奨励しました。また、2022年3月には台湾住民が大陸でより多く個人商工業者登録するよう促す通知を出し、従来の、飲食・紡績・アパレル・家庭用品・文具など24項目を122項目に拡大しました。このほか、毎年、数千名の学生を大陸の大学に進学させ、隣接する福建省では、台湾の人材を農村の技術指導に採用、また、地域社会への活動に参加する道も開くと同時に、「同胞」意識を醸成するため、台湾在住の多くの福建省出身者に、故郷の肉親と交流を深めるよう促しました
 こういった涙ぐましい努力に冷水を浴びせたのが、同年8月のペロシ米国下院議長の訪台で、中国政府はこれに激しく反発、11日には、国務院が「台湾問題と新時代中国統一事業」と題する長文の白書を発表、同時に台湾周辺海空域では軍事演習を展開しました。
 2023年、中国政府は総統選挙に向けた影響力を高めるため、野党国民党の馬英九前総統を大陸に招いてテコ入れを図り、馬英九も「両岸の人々は同じ民族であり、同じ祖先を抱いている」とこれに呼応しましたが、結局、頼氏の当選を阻止することはできませんでした。

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