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第1113回 新しい権力構造

(2024年3月28日)

 中国は共産党一党独裁と言っても、内実は激しい派閥闘争の国。地方閥・出身機関閥・産業閥・閨閥・学閥などが縦横に抗争を繰り返してきました。2012年習近平登場後しばらく、江沢民系(機械工業閥や石油工業閥)、胡錦濤系(共産主義青年団系)、習近平派三つ巴の抗争が続きました。しかし2022年第二十回党大会後、江沢民や李克強(共青団系)が死去し、習近平の権力体制が完成したかのように見えました。
 第二十回党大会の政治局常務委員序列上位は習近平、李強(現首相)、趙楽際(現全人代委員長)、王滬寧(現全国政治協商会議主席)、蔡奇(現党中央弁公庁主任)。趙楽際は父親が習近平の父、習忠勲の側近とも言われる陝西省出身、王滬寧は江沢民・胡錦濤・習近平の理念的支えとして「三代帝師」とも呼ばれ、山東省出身。一方、蔡奇は習近平の福建時代からの腹心で、多くの習側近福建派(閩江旧部)のリーダーに、李強は習近平の浙江時代からの腹心で、多くの習側近浙江派(之江新軍)のリーダーになっています。習近平の転任に従って浙江に乗り込んだ福建派とこれを迎えた浙江派に対抗心が芽生えるのは必然と言えましょう。
 現首相は李強。過去、胡錦濤と温家宝、習近平と李克強はそれぞれ胡温体制、習李体制と呼ばれ、首相が№2でしたが、第二十回党大会の「国務院組織法」改正で党が上位に置かれるなど、李強首相の存在感は低下し、蔡奇党中央弁口庁主任との位置が逆転しつつあります。最近とある日の人民日報一面で、両者の似たような記事が、蔡奇氏のは左側の人民日報の題字の下に、李強氏のは右側の中ほどにあったのは、その微妙な位置づけの表れでしょうか。
 こうして両派が張り合う中、習近平夫人彭麗媛やその親族と結婚した王滬寧など山東派が隠然たる勢力となっています。山東省はもともと軍人を多く輩出し、彭麗媛夫人も軍の歌舞団団長でした。そういえば、文化大革命の四人組メンバーの毛沢東夫人江青や、張春橋も山東出身でした。現在も董軍新国防相を始め、王春寧武装警察隊司令官など錚々たる顔触れがそろっていますし、党の政治局員の中の最大派閥でもあります。一方、福建派には、陳文清中央政法委書記や王小洪公安相といった強面に加え、新たに経済・金融の舵取りを任された何立峰福首相が、浙江派には、一時、習近平の後継者の一人に目された陳敏爾天津市党委書記、経済面の呉清証券監督管理委員会新主席もいますし、応勇最高人民検察院院長も浙江派です。この三派がポスト習近平でいかなる役割を演じるか、憶測を呼びそうです。

三瀦先生のコラム