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第1115回 対外関係の動き―その1-

(2024年4月11日)

  2023年12月末、北京で中央外事工作会議が開催され、習近平外交思想として、特色ある大国外交が全面的に打ち出され、翌2024年2月の第60回ミュンヘン安全保障会議では、王毅外相が記者会見で、中米外相会談は誠実かつ実質的・建設的に行われたとし、「相互尊重・平和共存・協力互恵こそが両大国の正しい共存の道である」と述べ、また、習近平主席が第三回“一帯一路”国際協力サミットで示した8項目の行動に言及し、「新たな十年に向けアップグレードする」ことを強調しました。しかし、中国がイニシアチブを握る多極的外交の構築を目指す姿勢と、これまでの王毅外相を中心とした「戦狼外交」は、各国に警戒心を呼び起こし、現実には各方面で様々な軋轢を生じさせています。
 とは言え、中国にも切羽詰まった事情があります。例えば、中国は経済不振で外国投資が激減し、このままでは日本の二の舞を踏みかねません。とりわけ、国内の中小企業は抜本的対策を必要としています。そこで政府が護送船団さながらに、これらの企業に対し、融資強化、税の減免、デジタル化、新技術の開発、特許保護など様々な優遇措置を講じつつ、海外、とりわけアジア進出を奨励し、中国の法律事務所もその手助けを始めているのはその証左でしょう。今の中国は、メンツは保ちつつも、経済の崩壊を防ぐために、アメリカとは協調姿勢を取らざるを得ず、日本に対しても最近また戦略的互恵関係を持ち出しているように、本音では関係改善を急務と考えており、「戦狼外交」もなりを潜めつつあります。
 台湾問題に関しても、岸田首相の米国訪問に合わせて馬英九氏を招くといったさや当てはしているものの、翻せば、台湾に対し、当面武力行使はしない、というシグナルでもあります。今回の総統選挙の前、2023年には、台湾に対する様々な優遇措置が次々と打ち出し、国民党候補の間接的支援を行っていましたが、今年1月末に頼氏の勝利が決まった後に人民日報に掲載された台湾関係の記事は、数えるほどしかありませんでした。2月22-23日に王滬寧政治協商会議主席が出席して2024年対台湾工作会議が北京で開催されましたが、従来の主張が繰り返し披露されただけで、激越な反応は全くありませんでした。3月14日の人民日報に「一つの中国という原則を堅持する歴史的大勢はあらがえないものだ」という記事が掲載され、台湾独立派を強く非難するとともに、世界各国が一つの中国を支持していることを列挙しましたが、従来の表現を超えるものではありませんでした。

三瀦先生のコラム