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第1116回 対外関係の動き―その2-

(2024年4月18日)

  ここで現今の世界情勢を鑑みて、中国がいかなる具体的外交戦略で臨んでいるかを俯瞰してみましょう。4月14日からドイツのシュルツ首相がドイツ企業のトップなどを連れて中国を訪問しています。ドイツにとって中国はここ8年連続最大の貿易相手国。しかし、2023年に供給網の見直しをした結果、対中貿易は16%も減少しました。経済の低迷に悩むドイツにとって対中関係改善は不可欠。一方中国にとっても欧州との関係改善は、アメリカによる先端半導体対中輸出規制への対処、さらに、中国のEVや太陽光パネルに対するEUの制裁関税を回避する点でも楔を打ち込めます。
 EU諸国の中国に対する足並みは一様ではありません。2023年末にはイタリアが「一帯一路」からの離脱を宣言、G7の中で唯一の一帯一路参加国だったイタリアの離脱は中国外交に少なからぬ痛手となりました。また、フランスも同月、中国のインド太平洋地域への進出に対抗し、オーストラリアと同地域内にある両国の軍事基地の相互利用に関するロードマップを採択しました。こういった中、5月に習近平首相がフランスやハンガリーへの訪問を予定しているのは、EUの中核である独仏を抱き込もうとする戦略にほかなりません。
 こうした動きのもう一つの要因が、アメリカの大統領選挙とロシア-ウクライナ戦争です。「もしトラ」が現実となれば、EUに対してもウクライナに対しても厳しい姿勢で臨むことが予想され、そうなれば、ロシアが好機とばかり攻勢に転じることは想像に難くありません。その暴走を防げるのは、ロシアの大きな後ろ盾となっている中国だけであり、中国にしても、一帯一路による自国の経済効果に大きな打撃を与える方向は看過できません。  
 世界の多極化が進む中、中国は従来、BRICSやグローバルサウスを味方に引きずり込み、その盟主として、国際政治と経済のグローバルガバナンスのイニシアチブを取ろうと画策してきました。しかし、BRICSの主要メンバーであるインドとの関係は緊張を増してきており、インド洋の覇権をめぐって軍拡競争が続いています。インドは、中国の「真珠の首飾り」戦略に対抗して、現在、三隻目の空母を建造中で、一方、中国も31年末までに5隻体制を整備するよう取り組んでいます。
 米大統領選挙の結果がどうであれ、こうした目まぐるしい国際情勢の変化に対し、岸田訪米後の日本が自主外交をどう展開するのか、日本は大きな岐路に立たされています

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