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第1177回 農村義務教育の動向-その2-
(2025年7月3日)
教育内容の充実も大事なテーマ。例えば、農村教育では音楽教育の遅れが問題になっています。そんな中、貴州省遵義市鳳網県真建村に出現したのは“打火石”バンド。エレキギターとドラムの響きが深い山にこだまします。このバンドを育成した樊彪先生は1995年生まれ。大学で音楽家を専攻したのち、2019年に特別教師としてこの貧しい農村地帯に赴任しました。「子供たちをもっと楽しませてあげたい!そうだ、子供たちのバンドを作ろう!」、そう考えた彼でしたが、そこで頭を抱えてしまいました。「私はギターとベースしか弾けない。これじゃあ無理だ」。ところが二年後の2021年、もう一人の音楽教師童衛さんが赴任してきたのです。二人は協力してバンド発足という夢に向けて歩みだしました。まずは場所の確保、古い校舎に何とかスペースを確保すると、二人は自費で楽器を購入し、子供たちに教え始めました。最初に集まった7人の子供たちは必死に楽器に食らいつきました。なんと立った1カ月で1つの曲が弾けるようになったのです。以前はおずおずと人の陰に隠れたがった子供たちは、舞台に立つと目を輝かせ、みるみる活発に活動に取り組むようになりました。これを知った県の教育部門や企業が積極的な支援に乗り出し、新学期には、設備が整えられた新たな練習場もお目見えしました。ここは江西省吉安市泰和県の山奥の農村。2017年、25歳の肖惠文さんは音楽教師として故郷へ赴任しました。やる気満々でしたが、しょっぱなから大きな壁にぶち当たりました。子供たちに音楽の基礎知識を教えてあげようと思ったのですが、子供たちはちんぷんかんぷん、「一体何を教えたらいいのだろう」と頭を抱えてしまいました。そこで思いついたのが竹笛。小学生のことから良心に竹笛を教わっていた肖さんは、まず、竹笛を通して子供たちに音楽の楽しさを教えてあげよう、と思ったのです。2020年の秋学期が始まると、肖さんは38名の児童からなる竹笛班を立ち上げました。肖さんの熱意は子供たちに伝わり、しばらくすると<井崗山の麓でスイカを作る>を上手にふけるようになりました。全校児童670名のうち60%が留守児童というこの村で、竹笛の音は子供たちに歓声と笑い声を取り戻させたのです。
これらの取り組みは周囲を巻き込み、今では大きなうねりになりつつあります。就職難に喘ぐ中国の若者ですが、寝そべり族どころか、進んで農村に溶け込み、農村の児童に手を添える多くの純粋な若者がいることを忘れてはいけません。