トップ > 現代中国放大鏡
Last Update:
第1184回 中国における日系企業の社会貢献
(2025年8月28日)
中国で「企業の社会的貢献」(CSR)が本格的に叫ばれるようになったのはいつごろからでしょうか。改革開放初期、企業はまだ「国家の一部」としての性格が強く、国有企業は当然の義務として従業員や地域社会に対し教育・医療・福祉・住宅・エネルギーなどを提供していました。1990年代末、WTO加盟を控え、国有企業の負担を軽くし、外国企業と戦える環境を整備することが喫緊の課題になり、大量のレイオフが発生しました。市場経済化を急速に進めた結果、経済は成長しても人々の収入はそれほど伸びず、教育・医療・福祉・住宅の重荷が人々の肩に重くのしかかりました。こうした中、企業の環境・労働・社会に対する責任に国際的な視線が高まり、「CSR」が政策上の議論になり、自然環境の極度の悪化を契機に2006年「中国企業社会責任連盟」が設立されました。しかし、2008年のリーマンショック後の経済的混乱の中、「CSR」は一時期、笛吹けど踊らず、といった状態が続きましたが、2012年に習近平が登場したのち、とりわけ2014年ごろを契機に「環境・社会・ガバナンス(ESG)」の枠組みでCSRを語ることが増え、中国証券監督管理委員会もESG開示を強化、特にIT大手や不動産企業に対しては、寄付・教育支援・環境投資などが求められる状況になってきました。こうした中、実は日本企業も様々な形で社会貢献や公益活動を行っています。例えば、中国社会科学院が作成した「企業の社会的責任(CSR)青書2023」においては、パナソニックが11年連続して日系企業のトップを占め、5年連続で外資系企業中の3位を獲得、中国社会への責任を果たしているその姿勢は高く評価されています。オムロンは中国農村部における教育格差是正に向け、書籍やPC・健康機器などの寄贈を積極的に行っています。また、三菱電機(中国)も「三菱電機中国青年環境推進活動」を継続的に実施、優れた環境技術や教育プロジェクトへの支援や野外環境保護活動を実施しています。
ある調査によれば、中国において「公益活動を主催した経験がある」「積極的に社会貢献活動を展開して公益事業の発展に力を入れている」という日系企業の割合は28.5%に上ります。欧米企業の42.9%に比べるとやや劣るものの、日系企業も一定の社会貢献を行っていることが見て取れます。