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第1196回 20期四中全会の評価-その3-

(2025年11月20日)

  “新質生産力”とは現政権のスローガンですが、その育成に向けて様々な策が講じられています。核心的技術、とりわけ集積回路、工作機械、先端機器、ベーシックソフトウェア、先進的材料、バイオものづくり等、重点分野の技術開発・研究開発の強化が明記され、R&D費に占める基礎研究費の引き上げ、地域イノベーション体系の充実、概念実証プラットフォームやパイロットプラント拠点の配置も謳われました。企業が先頭に立ってイノベーション連合体を構築して国の科学技術開発に尽力することも重要なポイントです。イノベーションチェーン・産業チェーン・資金チェーン・人材チェーンの高度な融合を促進し、研究開発リーディングカンパニーを育成することは、“新質生産力”の発展に欠かせません。また、ハイテク企業が研究開発型中小企業の発展を支援することはまさに焦眉の急であり、経済発展の維持にも不可欠なテーマでもあります。


 “新質生産力”の発展に欠かせないのが、現代化インフラシステムの構築で、全国規模の取り組みとして、情報通信ネット、コンピューティングネットワーク、現代化総合交通運輸システムの整備が強力に推進されており、国際輸送ルートやエネルギー輸送幹線網の強靭化も注力されます。同じ視点で「デジタル中国」の建設も不可欠のテーマです。全国的に一体化されたデータ市場を構築し、実体経済とデジタル経済の高度な融合を推進し、「AI+」を全面的に実施して科学研究のパラダイムシフトを巻き起こすことも大きな目標です。ただ、中国政府にとってAIの発展はガバナンスの安定維持が大前提であり、関連法律法規・政策制度などを充実させることも明記されています。


 こうした未来志向の取り組みが進められる一方、足元では、いかにして内需を拡大するかという戦略的基盤の維持が、依然として頭を悩ます問題が控えています。手詰まり感が強い中、政府は金融制度を充実させて下支えを強化しようと、科学技術金融、グリーン金融、包摂金融、養老金融、デジタル金融など様々なアイテムを用意していますが、金融強国を自称するにはなお道遠し、といった感があります。  

 
 

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