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 第百四十回 人権−人文精神


2001年3月、西安市の30歳になる国有企業女性従業員が、上司に対し中国で初めてセクハラ訴訟を起こしました。結果は証拠不十分で受理されませんでしたが、その後 2003年6月には武漢の女性が初めて勝訴しました。調査によると中国人女性の84%が何らかのセクハラを経験しているそうです。
精神的損害に対する賠償制度が成文化されたのは1986年の<民法通則>が最初です。公民の人権保護の第一歩と言えましょう。更に2001年3月に最高人民法院から<民事的な権利侵害による精神的損害賠償責任を確定する上での若干の問題に関する解釈>が 出され、2002年12月には第9期全人代第31回会議で新中国最初の民法草案が審議されました。その中で特に注目されたのが、同草案第四編に人格法(7章29条)が独立して設けられたことです。世界初のこの試みには国内でも賛否が渦巻いていますが、法理論上の問題はさておき、<民法通則>と比べ、自然人の人格権に新たにプライバシ−・信用権が加えられるなど、中国政府の人権問題に関する意気込みが伝わってきます。
庶民の関心が高いのは公権力の濫用や不当な取調べです。例えば、憲法では公民の住宅に不法に侵入して捜査することを禁止していますが、実際は権力をタテにした無法がまかり通っています。この問題に対しては、捜査員は必ず制服を着、身分証明書を 提示し、捜査令状を用意することが求められました。また、被疑者の人権にも配慮すべきだと、2004年1月1日、公安部は<公安機関行政案件処理手順規定>を施行し、「被疑者の取調べは12時間を越えてはならない」「被疑者の人格を尊重しなければならない」「自白を強要したり、違法な証拠収集を行ってはならない」などと規定しました。更に服役者の人権も論議され、2003年2月、公安部は服役者の結婚を認める通達を出し、獄中結婚が相次ぎました。
 筆者は80年代に中国で、トラックに載せられた若い男女数人が罪状を書いた札を胸に下げ、銃を突きつけられ、処刑場に連れて行かれるのを見かけましたが、このような"遊街"「市中引き回し」や公開死刑宣告大会も廃止されました。多くの立ち遅れた農村地帯を抱え、封建的陋習が根強く残っている中国で、人権-人文精神(ヒュ−マニズム)を浸透させる険しく遠い道のりが今正に始まっているのです。

三瀦先生のコラム