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 第173回 物権法

「物権法は富が脚光を浴びる時代のしるしである。ある異常な時期には、財産や富は洪水や猛獣のように見られ、人々はそれらを追求する気持ちを持つことを恥じた。今日、改革開放の進展につれて、我々は富が奔流する時代に大きく足を踏み入れた。」
「真面目に働き、合法的に豊かになることは既に多くの大衆の生き生きとした実践活動になっている。整った物権法を制定することは、人民の財産の自由と権利を保障することであり、時代の要求に応えるものであると同時に、人類の制度・文明による成果を合理的に受け継ぐものである。」

(いずれも人民日報2004.10.27)

2002年2月、物権法・契約法・婚姻法など9つの法律を含んだ中国民法典草案が初めて上程され、中国民法典の枠組み・構成に関する議論が行われました。これを受け、2004年10月の10期全人代第12回常務委員会では、実質審議の第一弾として、物権法に関する討議が行われました。物権法の制定は、既に憲法に明記された人権の尊重・保護や、公民の合法的私有財産の保護といった理念の具体化であるのですが、中国では、物権という概念が家具類や不動産といった有形のものだけでなく、商標や著作権といった知的財産をも含むものであるということが一般民衆にまだよく理解されていません。議論は、一般民衆にわかりやすくするために、専門語彙をどうするか・文体をどうするか・法律と道徳の境目をどこに置くのか、といったレベルからスタートしています。
中国では、最近、マンションの住人と不動産会社の間での紛争が絶えません。物件法草案では、「建築物の部分所有権者会議は、当該建築物とその付属施設に関する管理規定を定め、自己管理か委託管理ができ、建築側が依頼した管理会社に不満がある場合は他社に変更できる」となっていますし、「住宅を飲食業・娯楽関係の商用施設にするような場合は、建築物部分所有権者の同意が必要である」とも規定しています。また、一つのマンションを同時に何人にも売るケースが増えていますが、物権法では不動産登記の閲覧が自由になるので、買う側が確認できるようになり、業者側の悪質な転売を防ぐことができます。
物権法は、2005年6月に再審議され、ほぼ成立する見通しですが、様々な所有制が入り混じっている中国の現状にどう適合させるかが大きな焦点になります。

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