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 第210回 改善が進む中印関係

(2005年12月19日執筆)

チベットのラサから亜東を通りインドのカントークへ抜ける伝統的な通商路『茶馬古道』がこの秋復活しました。近年、中印貿易は年々増加し、2004年には前年比79%増(136億ドル)に達しましたが、ほとんどは海運に頼っています。中印間陸路最短コースが開通し、今後、自動車道路等が整備されれば、シリグーリでインド全土の高速道路網との接続が可能で、一層の発展も期待できます。東部マクマホンライン・西部ラダク地区の国境画定にからむ両国の確執は、59年のダライ・ラマのインド亡命、62年の軍事衝突で緊張状態が高まり、インド・ソ連対中国・パキスタンという対立を生みました。漸く84年になって貿易協定に調印、92年に<国境貿易出入国手続きに関する議定書>を取り交わし、2003年のパジパイ首相の中国訪問で『茶馬古道』の復活が決まったのです。
2005年、両国関係は大きく前進しました。4月に温家宝首相が訪印して<中印国境問題解決に向けた政治指導原則の協定>を結び、更に<経済貿易協力5ヵ年計画><航空運輸拡大に関する備忘録>など計12の合意文書を取り交わしました。温家宝首相はインドIT産業の中心、バンガロールを訪れ、IT分野での協調メリットを強調、2010年の両国貿易額300億ドルを視野にFTAの研究をスタートさせることも示唆しました。
中印の関係改善は、他の国々にも様々なインパクトを与えています。7月に上海で開催された上海協力機構首脳会議にはインド・パキスタン・イラク・モンゴルがオブザーバーとして参加、加えて2006年に中露印三国合同軍事演習を実施する、との発表もありました。イスラム過激派テロ対策・アメリカ一極支配への対抗措置が背景に有ります。ただ、インドは、一方にのみ偏る政策は取らず、温家宝首相訪印の2週間後には日本の小泉首相と8項目の新協力の枠組みを設定、また、大半の兵器をロシアから買い付けている一方、アメリカからの購入も検討するなど、バランスに腐心しています。
この9月には北京朝陽公園でガンジーの彫像の除幕式が行われ、その後、インド洋では両国海軍の初めての合同軍事演習も行われました。その一方でインド国防相が国防検討会で「62年の中国の侵略」という表現をし、中国側の強い抗議を受けもしました。中印それぞれの思惑、各国の思惑、虚虚実実の駆け引きはしばらく続くことでしょう。

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