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 第265回 狂犬病の蔓延と対策

(2007年2月13日)

中国では狂犬病の蔓延に関する記事が2006年夏頃から急激に目立ちました。取締りが強化される一方、イヌの飼育方法と飼い主のマナーに関する議論も白熱し、一方で愛犬家からの反発が北京では抗議デモに発展、外国では「イヌを虐殺する中国製品をボイコットしよう」という呼びかけも登場しています。
ここ数年、中国では狂犬病の発生が顕著になっています。サーズ騒動があった2003年上半期、伝染病での死亡率トップはサーズではなく狂犬病でした。それが今年になって急に注目されたのは急激な増加率です。2006年1月〜9月の発症件数は2254例と、昨年同期の1738例に比べ約30%増、9月一月だけで318人が死亡しました。いまや中国は世界第2位の狂犬病多発国で、主要発症地区は貴州・広西・湖南・広東・湖北といった南方地区ですが、ペットの増加に伴い北京でも上述の期間に10万人あまりがペットに咬まれ(うち9人が狂犬病)、上海でも状況はほぼ似通っています。
雲南省牟定県では今年になって狂犬病が流行、400人あまりが咬まれ、遂に全県5万匹のイヌを皆殺しにしました。16人が狂犬病で死んだ山東省済寧市では、発症地点半径5km以内のイヌを強制的に捕殺、15km以内のイヌには強制免疫措置を施しました。こういった措置に対し内外から抗議行動があったわけですが、「サーズではハクビシンを、トリインフルエンザではニワトリを予防のため大量に殺した。イヌも同じだ」という声も。
各行政府も真剣に取り組み始めました。北京市では既に2003年に<北京市飼い犬管理規定>を定めていますが、100万匹あまりといわれる飼い犬のうち登録数はわずか55万匹あまり。管理を徹底させるため、2006年10月25日に総決起大会を開き、①大型犬と気性の荒いイヌ②未登録犬③一軒で複数の飼育④鎖なしの散歩と公共の場所への違法な立ち入り⑤他人への迷惑⑥市の環境衛生への影響⑦捨てイヌと野良犬⑧違法なイヌの売買⑨イヌの病院やイヌショップの違法経営の9項目を対象とした一斉取締りを開始しました。
未登録の“黒狗”が多い理由は飼い主の怠慢もありますが、登録料が高いことや手続きが面倒といった理由もあります。武漢では10月10日からワンストップ式手続きを開始しましたが、こういった行政側の努力がなお一層求められていることも確かです。

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