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 第322回最近の住宅問題−その1−

(2008年4月14日)

1998年に国務院が発した『都市住宅制度改革の一層の深化と住宅建設加速に関する通知』によって、中国の住宅政策はそれまでの福祉的な住宅分配制度を撤廃し、貨幣化の道が推進されました。その結果、商品住宅建設が急速に拡大し、1998年〜2004年の商品住宅建設投資額は年率28.4%で増加、住宅公共積立金制度も各地で始まりました。住宅制度の改革・土地制度の改革・金融制度の改革が呼応することで不動産業は飛躍的な発展を遂げました。
しかし、商品住宅建設が高級物件に集中し投機の対象になって住宅価格が高騰、一方、小規模住宅は供給不足で、庶民にとって「小さな家がない、大きな家は買えない」現象が甚だしくなりました。低所得者層向けに構想され、10数年続いた経済適用住宅制度も、対象や規模・価格に関する厳格な規定と取締りが無いため、金持ちの購入・投機の対象になり、北京の経済適用住宅アパート天通苑の物件などは価格が13万元余りにまで高騰しました。
こうして所得層別にセットで住宅制度を補完すべき経済適用住宅と商品住宅の線引きが曖昧になり、住宅に手が届かない低所得層向けの低価格賃貸住宅の整備が急務とされました。2007年は90平方メートル以下の総合住宅新規着工住宅面積は年度住宅建設総面積の70%以上なければならない、という目標が設けられ、併せて2006年末までに全国657都市中512都市(77.9%)で低価格賃貸住宅制度が確立され、未整備の都市も2007年中の制度確立が国によって求められましたが、そこに大きな問題が発生していたのです。
2006年末、最低生活保障家庭のうち一人当たり住宅面積10平方メートル以下の家庭は400万戸でしたが、低所得層も含めると988万戸になります。この層が経済適用住宅には手が届かず、低価格賃貸住宅の対象には入らない狭間になっていたのです。中国消費者協会が2007年7月に発表した都市商品住宅消費者満足度調査(2006年10月〜2007年1月)によると、消費者の64.2%が1平方メートル当たり2000〜5000元を期待していますが、実際の販売価格はそれをはるかにオーバーしています。この低所得層の住宅問題を解決するためには、十一五期間に500億元が必要と試算されており、この資金を賄うため、財政予算を主とし、住宅公共積立金の運用収益を組み合わせた資金に、更に土地譲渡収益の5%を確保する方針が確認されました。こういった動きを受けて2007年後半がどう展開したかは次回に。

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