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 第349回戸籍改革にまつわる話題

(2008年10月27日)

<中華人民共和国戸口登記条例>が実施されたのがちょうど50年前の1958年。このときから始まった農村戸籍と都市戸籍という2元構造が転機を迎えています。どちらの戸籍に属するかによって条件に大きな違いがあり、例えば、“同命不同価”と言われる如く、同じ交通事故にあっても、都市戸籍の方が数倍も多く賠償金がもらえたりします。多くの出稼ぎ労働者が都市に出て働いていても、医療などの保障や家族の教育・老後の問題などで不都合や差別があり、不満が高まっていました。90年代に入り、これを統一しようという目標が掲げられ、近年12の一級行政区で“居民戸籍”として統一されました。しかし、名称を統一しても、民生・教育など様々な付帯条件の平等が伴なわなければ真の改革とは程遠く、また、戸籍の移動が困難なままでは不満もなくなりません。
戸籍の移動に関門が大きいことは、結果として、本籍地と離れて暮らす住民(“空挂戸”)の増加を惹き起こします。その結果、行政側は住民の把握が不十分になって各種行政政策の立案に支障を来たし、住民側は、本籍地にいれば享受できる様々な社会保障が受けられないままです。そこで、自由な移動を保障する戸籍法の将来の制定に向けて、今、少しずつ改革が始まっているのです。まず、一挙に一元化できなくても、収入条件や住居の面積条件の撤廃、中古住宅や借家でも一定期間(例:四川省成都市では3年間)住んでいれば可など、都市戸籍取得条件を大幅に緩和すること。また、夫婦や親子の別居解消のため、配偶者の同居や老父母が子女のもとに身を寄せた場合の現地戸籍取得を認める動きも広がっています。
その一方で、増加の一途をたどる短期滞在型住民の管理も大きな問題。河南省鄭州市では2007年8月から“暫住登記”が5年ぶりに復活、やむを得ない措置か、それとも時代に逆行した措置か、議論を呼びました。1年以上滞在する流動人口が500万人に達する深圳市では、同年9月から<深圳市居住証>のほかに30日以上滞在している流動人口に対しまず試験的に<深圳市臨時居住証>を発行、2008年8月から正式に実施の運びとなりました。
そんな中、浙江省台州市からは、“新知青”の出現が報告されています。都市での生活に不安を感じる低収入の大卒者が、医療保険・年金・最低生活保障などが整備された豊かな新農村に魅力を感じ回帰する現象が起こっているのです。

三瀦先生のコラム