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 第354回中国の南極活動

(2008年12月1日)

2008年10月20日、中国第25次南極科学調査隊を乗せた観測船雪竜号が上海を出航しました。今回の最大の目的は南極大陸内陸部に新しい拠点「崑崙ステーション」を建設することで、2009年1月に完成の予定。
世界規模の極地科学調査活動である国際極地年活動(IPY)の第一回活動が行われたのは1882年のこと。その後、1932年・1957年にも実施され、1957年には南極条約の締結が促進されました。2007−2008年第四回国際極地年活動に当たり、中国は初めて参加を表明、2007年3月1日から「2007−2008年国際極地年中国行動」がスタートしました。中国の極地活動は“一船三站”と呼ばれています。観測船雪竜号と南極の長城(1985年建設)・中山両ステーション(1989年建設)、北極の黄河ステーション(2004年建設)で、1984年に最初の南極観測隊を派遣して以来、次第に態勢を整えて今回の参加につなげたのです。
今回の参加の中心プロジェクトは“熊猫計画”(パンダプラン)と呼ばれています。その趣旨は南極地域と地球全体の気候及びその変化との関連性を探るもので、氷・岩石・堆積物などを採取し、海洋や大気の観測を進める内容になっています。こうした計画に沿って、2007年には雪竜号の大改造が行われ、2007年11月12日に第24次科学調査隊が南極に向かいました。その主目的は ①内陸部に新しい拠点を築くための測量調査 ②国際極地年中国行動項目の実施 ③極地調査能力の向上 で、特に①についてはドームA(南極を覆っている氷塊の中でも最も内陸部にあり、最も標高が高い)地域の観測を行い、5万分の一の精密な地形図を作製すること、③については従来の長城・中山2ステーションを大幅に改造し機能アップを図ることが重要事項として挙げられました。こうした経過を経て2008年3月、中国は南極条約議定書に基づき、崑崙ステーション建設運営に関する包括的環境影響評価書案を締結国に対して公表し、冒頭の第25次南極科学調査隊による崑崙ステーション建設が始まったのです。
南極では米露が中心になって盛んな調査が行われ、協調と競争が交錯しています。気候変動など地球規模の問題で協力する一方、南極に眠る資源の争奪にも拍車がかかります。中国が南極の外縁部から内陸に拠点を求めた今回の積極的な参入はその一端ともいえましょう。

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