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 第438回風力発電への取り組みとその問題点

(2010年9月13日)

中国では近年、新エネルギーの重要な項目として風力発電が猛スピードで発展しています。80年代から始まった風力エネルギー資源の調査はいずれも高度10メートル前後の資源調査にとどまっていました。そこで政府は2007年から400箇所の観測網を設置して高度120メートルに至る風力資源を測定し、その結果、高度50メートル地点では、陸上で23億8000万キロワット、水深5〜25メートルの近海で2億キロワットが開発可能であることが明らかになりました。主な地域としては、内蒙古の東部や西部、新疆の哈密、甘粛省の酒泉、河北省の壩上、吉林省西部、江蘇省近海などが挙げられています。
このうち酒泉では、2009年8月に1000万キロワットクラスの風力発電基地が着工し、2020年には2000万キロワットを達成する目標を掲げています。三峡ダムの発電能力が2250万キロワットですから、これに擬えて「陸の三峡」とも呼ばれています。一方、江蘇省の東台も1000万キロワットを超える風力発電が可能な事から、「海の三峡」と呼ばれています。2009年にはアジア最初の海上風力発電場である上海東海大橋風力発電場が建設されました。風力発電が特に盛んなのが内蒙古自治区。自治区全体の風力発電能力は2009年には300万キロワットと全国一になり、2010年末には500万キロワットに達する勢いです。
このように風力発電設備は年々倍々ゲームで増え続け、本体製造メーカーは80社を超えていますが、年1000万キロワットの設置規模に対し、生産能力は世界第4位、2000万キロワットにも達して明らかな過剰に陥っています。しかし風力発電能力の全国発電能力に占める割合はわずか2%弱、デンマークの25%、スペインの11%などと比べればまだ微々たるものです。それがなぜ生産能力過剰なのでしょうか。
実は電力網の整備が追いついていないのです。風力発電所の建設は、5万キロワット以下は地方政府の認可でOK。このため5万キロワット未満に建設が集中し、国の電力網計画との計画性がないため、電力網に引き受け能力がなく、供給できなくなっているのです。また、北方は、火力発電所が冬場の暖房供給の役割も兼ねていますから、簡単に風力に切り替えるわけにも行きません。今後。自前の技術を持たない低レベルの小型発電設備をどう淘汰し、供給能力と需要形態にマッチした風力発電を育成するかが課題と言えましょう。

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