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 第455回高まる庶民の人権意識

(2011年2月14日)

2009年は「民意の年」と呼ばれました。庶民の人権意識の高まりを反映しての事です。2007年の十七全大会の報告で「知る権利、参加する権利、表現する権利、監督する権利」が明記されて以降、庶民の権利意識は年々向上しています。B型肝炎保菌者の進学就職差別は撤廃になり、広東省では周辺住民の同意無しで着工しようとしたゴミ焼却発電所建設が住民の反対で工事一時差し止めに成りました。
こうした状況を反映して、2009年12月全人代常務委員会で「侵権責任法」が採択されました。この法律は2002年から物権法に含まれる内容として立法作業が進められていたもので、その第2条には民事権益として「生命権、健康権、姓名権、名誉権、栄誉権、肖像権、隠私(プライバシー)権、婚姻自主権、監護権、所有権、用益物権、担保物権、著作権、専利(特許)権、商標専用権、発現(発見)権、股(株)権、継承(相続)権」が記載されています。その第17条では、「同一の権利侵害行為で死亡した場合、死亡賠償金は同額とする」と規定されました。従来は「死亡賠償金は、訴訟を受理した裁判所所在地の前年度の都市住民平均可処分所得或いは農村住民の平均純所得の20年分」(2004年最高裁の規定)で、都市住民と農村住民の“同命不同价”(同じ命で異なる値段)が問題になっていました。
また、第22条では「他人の権益を侵害して重大な精神的損害を惹き起こした場合、被害者は精神的損害賠償を請求できる」と規定されました。従来の“气死人不賠銭”(怒らせても賠償せず)が常識だった中国では画期的と言えましょう。ただし「重大な」程度の認定については具体的な規定が無いので、どこまで効果があるのかはまだ不透明です。
行政側による庶民の権利侵害に対しては、2010年4月、<改訂「国家賠償法」に関する決定>が全人代常務委員会を通過しました。従来、国家機関の違法行為による損害のみが国家賠償の対象だったのが、「違法」が削除されて合法的行為による損害も対象になりました。またこれまでは、賠償法に適合するか、賠償義務機関の査定を受けないと手続きに入れなかった確認義務が無くなり、ただ賠償義務機関に請求さえすればよく、証明責任も被害者から賠償義務機関に移ったことは朗報といえましょう。勿論、法律ができたからといって実際がすぐそれに伴なうわけではありませんが、大きな一歩を踏み出した事は評価されるべきです。

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