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 第四十七回  民工事情その1

(2002年9月09日執筆)
2002年11月、加筆修正いたしました。

  中国では今、農村の労働力の3分の1が十分な職が無く、余剰人口は1億5千万人、その上、人口増で、2001年〜2010年の間に更に6350万人の増加が予想されています。このため、多くの農民が出稼ぎに出、現在、流動人口は1億2千万人、地域間移動労働者の数は農村労働力の15〜20%に達する8000万人、都市に出て働く若者の数は8300万人に達し、公安部に正式に登録されている一時居住者だけでも4000万人あまり。
農業部の調査によれば、昨年、農村から働きに出た者は規模、範囲ともに拡大傾向で、農村労働力の23.3%と、前年比2.4%増になりました。
去る3月に北京で四川北京労務面談会を開催し、283の契約(合計19万人あまり、73億元相当)をまとめた四川省では、毎年数百万人が沿海地方に出かけ、その稼ぎ高は400億元と省の財政収入をも上回りました。貴州省でも昨年、100万の農民が出稼ぎに行き、省の財政収入の半分に当たる50億元を稼ぎ出しました。甘粛省では全国27省市に労務基地3645箇所を設け、省内95%の県が出稼ぎを奨励しています。
出稼ぎ労働者が急増する中で、多くの問題が発生しています。その最たるものが、賃金の未払い。契約無視はもちろん問題ですが、そもそも、労働契約さえ交わさずに働き、挙句に雇い主が労賃を頬かむり、という例が多発。政府も「これでは助けようが無い。」と、「まずじっくり選び、きちんと契約を交わしてから」とキャンペ−ンをしています。しかし、労働者たちに言わせれば、「わしらのための職業仲介所がほとんど無いし、有ったとしても面倒な手続きや書類の作成はとても手に負えない。」「じっくりと言ったって、知人もいない都会に一人ぼっちで、その間どうすりゃいいんだ。」「契約なんて言っていたら、ほかの奴に仕事をとられちゃうよ」とそう簡単に解決できる問題ではないようです。
契約を交わしたといっても、それ自体が人身売買のような「売身契約」、死んでも文句をいえない「生死契約」も横行している有様。労働時間の勝手な延長や劣悪な環境での労働に事故や病気(例えばじん肺)も多発。保険に入っていなければ医者にかかることもできませんし、もちろん雇い主は知らん顔、というのでは浮かばれません。小手先の改革ではない総合的な労働市場、雇用システムの整備が叫ばれる所以でしょう。

三瀦先生のコラム