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 第483回2010年の人民日報日本関係記事−その3−

(2011年8月29日)

2010年9月3日は抗日戦争勝利65周年にあたり、この前後には例年以上の抗日戦争関係記事が掲載されました。直後に起こった尖閣諸島の事件とは直接的な関係はありません。
2010年に人民日報に掲載された日本関係記事は、単なるニュースを伝える記事も多くなりました。世界の中の一つの国で何があったか、というスタンスです。また、中国の利害と深く関わる普天間基地問題に関する日米関係を論評する記事が目だったのは当然でしょう。デフレが続く日本経済を分析する総合的な記事も折に触れ登場しました。
日本ウオッチングでは、日航の経営破綻、学生の就職難、大前研一氏の『知の衰退』、人口の自然減少傾向といった日本が抱える諸問題や、短小軽薄の出版傾向、電子図書元年、テレビのデジタル化、日本のファストファッション、といった最近の現象も紹介されました。
一方「何があっても良いところは学ぼう」という中国人らしい率直的な視点は相変わらず健在で、多くの記事がありました。日本には中国に対するこういった視点が乏しく、嫌中なら徹底して嫌中といった狭量が目に付いてしまいます。
不況下での中小企業救済策や不動産に対する課税方法、都市の歴史的建造物の保護と重要無形文化財の保護、学習塾の発達状況、ゴミ処理方法や北九州市の公害対策と緑化の経験、エネルギーの節約と蓄積、企業管理職の収入の公表、ネットの取り締まり方法などは、いずれも中国の現状と深く関係しています。地震対策や自殺防止への取り組みも紹介されましたが、その後の大震災の経験や依然大量の自殺者が出ている現状では、先輩国だとそう胸を張るわけにもいきません。「日本では学歴より資質を見て採用し、職場で人材を育てている」という記事は、以前の日本なら「その通り」と胸を張れますが、今日の「即戦力をとり、育てもせず、用がなくなったら使い捨て」がはびこる現状では忸怩たるものがあります。
文化友好交流は尖閣問題で大きく傷つきました。平山郁夫氏を悼む多くの心情溢れる記事、緑化の恩人遠山正瑛氏のこと、村上春樹や渡辺淳一関係記事、古代の日中文化交流など、日中友好の“常連(?)”が相変わらず顔を見せましたが、双方の主張の是非は別として、領土問題に圧力をかけるためあらゆる民間交流を人質に取ったやりかたが、日中友好のために尽力していた多くの人々を完膚なきまでに叩きのめし、意欲を喪失させたツケは甚大です。

三瀦先生のコラム