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 第486回ASEANと中国の協調と摩擦−その1−

(2011年9月20日)

2010年1月に中国とASEANの自由貿易協定が発効して1年半以上が経ちました。19億人の人口と6兆ドルに上るGDPを有する巨大な自由経済圏は、2001年に双方が計画に合意してから約10年で漸く実現にこぎつけたのです。これにより、ブルネイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、シンガポールといったASEANの従来からの6加盟国との間では90%以上の生産品がゼロ関税になり、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーの4新加盟国との間では2015年に90%以上の生産品がゼロ関税になることが決まりました。
こうした状況の下で猛スピードの発展を見せているのが、ASEANに隣接する広西チワン族自治区と雲南省で、様々なプロジェクトが始動し、建設ラッシュに沸いています。広西チワン族自治区では早くも2008年に国によって<広西北部湾経済区発展プラン>が承認され、その後、国務院からも<広西の経済社会の発展を一層推進することに関する若干の意見>が出されて、欽州保税港区、憑祥総合保税区、南寧保税物流センターの設立が相継いで承認され、2009年には南寧と昆明を結ぶ雲桂鉄道などを初めとする海河陸空を網羅した交通インフラ整備計画が次々に着工されました。航空路の整備も急ピッチで、2010年には昆明−南寧−ビエンチャン、昆明−南寧−ラングーンなどASEAN諸国との航空路が相継いで開設され、大幅に時間を短縮しています。雲南省も東南アジアと南アジアに繋がる国際ルートとしての戦略構想を提起し、昆明−ベトナム、昆明−ラオス−タイ、昆明−ミャンマー−インド洋、昆明−ミャンマー−南アジアという4つの経済回廊を想定し、これにあわせた産業プラン物流プランを構築中です。
ASEANと中国の貿易は自由貿易協定発効後半年で54.7%増大し、1365億ドルとなり、中国にとって第4の貿易パートナーになりました。新しいビジネスチャンスの到来はASEAN各国と中国の二国間貿易で見ても顕著です。例えば2010年7月に陸上の国境線が正式に確定した中越間では、国境のモンカイ−東興年間往来者数は490万人にも達し、中国製の日用品が怒涛のようにベトナム国内に流入しました。また、こうした交流は経済以外の分野にも波及し、2020年にはASEAN・中国双方が10万人の留学生を受容れる計画も提案されました。そんな友好ムードに突如冷水を浴びせたのが尖閣列島問題です。それは次回に。

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