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 第506回幸福感

(2012年2月13日)

1年前の2011年1月4日付人民日報に<2011渴望更多幸福>という記事が掲載されました。具体的に並べられた項目は「収入を増やせ・就職の道を広く・医療負担を軽く・住宅を安く・教育を公平に・社会保障(特に老後)の充実を」といったもの。2011年は第12次5カ年計画スタートの年、全人代を前に朝野を挙げて空前の幸福論議が巻き起こりました。
まず<思想政治工作研究>2011年第一期に「我々はどんな幸福を必要とするか」という文章が掲載されました。一方、人民網は幸福について11519人にアンケート調査(〜2/20)を実施、それによると34.4%が経済状況と生活の質をトップに挙げ、31.4%が権力の公正化と社会正義の徹底を、27.7%が社会保障と世間体の保持を挙げています。
幸福には土台となる社会環境の整備が不可欠と、各地の政府は「幸福広東」「幸福福建」「幸福重慶」といった標語を掲げ、「幸福指数」をGDPと対比して提起、収入増、社会保障の充実、行政サービス強化をアピールしました。北京市は「幸福都市」建設のキーワードとして、革新・経済発展方式の転換・人口・民生・社会保障・交通・環境の7つを挙げています。
これに対し、幸福感は各自で異なる主観的、多次元的な概念だ、という議論も当然起こります。これらを組み合わせた一つの答えとして紹介されたのが江蘇省江陰市の例(人民日報2011.2.27)。同市は2006年6月に「幸福江陰」を提唱、そのコンセプトは「五民五好」、即ち「民生-好い仕事/民富-好い収入/民享-好い環境/民安-好い精神/民強-好い身体」。これに基づき同市はその後<幸福江陰建設行動綱要(2011−2013)>をスタートさせています。
広東省は2011年10月に客観指標と主観指標からなる「幸福広東指標体系」を発表しました。前者は10方面、49の指標(地域によって基準は異なる)から行政府の実績を測り、後者は6900人を無作為抽出して大衆の幸福感を測るもので、毎年定期的に発表されます。
幸福を論議する時は不幸な人に思いを致すべきだとして、1.5億人の貧困者、就職難の大学生、不公平感に喘ぐ低所得者、教育プレッシャーに喘ぐ生徒、寂しい老後、腐敗、改革の不徹底への不満、直訴者の存在を挙げた文(人民日報2011.3.15人民論壇)もありましたが、“站起来”(立ち上がる)から“富起来” (豊かに)へ、“富起来”から“幸福起来” (幸福に)へとスムーズにステップを踏めるか、まさに正念場と言えましょう。 

三瀦先生のコラム