企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

LastUpdate:

 第507回薬価と薬の供給

(2012年2月20日)

2年半ほど前の2009年8月に、中国の国家基本薬物制度がスタートしたことをご記憶でしょうか。307種類の薬品が国家基本薬物目録に組み入れられ、それらは同時に基本医療保障薬品目録にリストアップされて、非基本薬物よりも高い費用控除が受けられ、個人の負担がずっと軽くなりました。これらの薬品はすべてネット上の公開入札で購入、その後統一して配送され、買い入れ価格で販売されました。初年度は各省や各県の30%の衛生機関で実施され、2020年には全国を網羅する計画でした。
薬が高すぎて診療を受けられないという問題に対処するために実施されたこの制度は、平均して基本価格を10%引き下げ、更に末端医療での価格の上乗せを廃止したため、合計で25%価格を引き下げることになると試算されました。その後、同年10月に公布された国家基本薬物小売指導価格では、45%の薬品が値下がりし、6%の薬品が品不足のため若干の値上がりをし、平均下落率は12%前後となりました。
当初、その効果が歓迎されたこの制度ですが、日が経つにつれ、問題点も明らかになってきました。2011年1月20日の人民日報には「薬価が安すぎて得をするのは誰か」という記事が掲載されましたが、まず、その内容を紹介しましょう。
「最近、原価1.25元の基本薬物が1.57元で落札されるなど、原価を下回る落札という現象が起こっている。基本薬物は利幅が小さいものが多く、これでは赤字だから、その分、原料で手抜きをしなければやっていけない。結局まともな企業は手を引き、残るのは、質に問題がある中小企業ばかりだ。さらに安くなれば、その薬自体が生産されなくなり、そのしわ寄せを受けるのは一般庶民である」。
2011年3月、27回目の引き下げが行われ、162品種で平均21%、全体で100億元の負担が軽減されましたが、一方で薬品の“降価死”も頻繁に発生してしまいました。その原因はリベートが取れない医者が使わない、企業が儲けが出ないため生産しない、に集約されます。
現在、薬価はほぼ4割ほど下がったものの、副作用も無視できない状況になっています。また、末端の診療所では、全体の6割を占めた薬の収入が激減した事で、医師の生活自体が苦境に立たされる、という事態も出現しています。

三瀦先生のコラム