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 第527回法整備と刑事訴訟法の改正−その2−

(2012年07月23日)

1979年に制定され、翌1980年から施行され、1996年には“无罪推定”“疑罪从无”が謳われた中国刑事訴訟法の修正案が2012年3月の全人代第5回会議で採択されました。2011年8月に全人代常務委員会に草案が提出され、8月30日に中国人大網(www.npc.gov.cn)が全文を公開して9月30日までパブリックコメントを募集し、およそ200日余りの論議を経て成立しました。今回の改訂は、従来の225条が290条に増え、修正条項も100箇所を超えるという大改訂で、構成も従来の4編に特別手続きの第5編が追加されました。
改正の内容は多岐に渡り、とてもこの紙面では紹介し切れませんが、例えば、証拠の収集について、第50条では、従来、拷問による自供や、脅し・誘導・虚偽などの違法手段による証拠の収集を厳禁していたのに加え、自己の有罪認定の強要を禁止しました。また、第33条では、被疑者は捜査機関による最初の尋問が行われる時点から弁護士を依頼できるようになり、また、第37条では、弁護士が被疑者や被告人と面会するときには傍聴監視されないことも規定されています。このほか、取調べの録音録画、尋問場所に関する規定や証人に関する規定なども大幅に拡充されました。第2条で同法の任務として「正しく法律を運用」「無罪の者が刑事的追及を受けないことを保障」「人権を尊重し保障」する事を謳っており、その線に沿った改革が盛り込まれている、というわけです。
しかし、一方でこれらの改革に含まれる別の要素を危惧する声も少なくなく、議論が白熱している事も事実です。例えば上記の第37条には、国家の安全を脅かす犯罪、テロ活動の犯罪、特別重大な汚職事件などでは、捜査段階での弁護士の面会は捜査機関の許可が必要になります。これまでどんな案件に国家の安全を脅かす罪やテロ活動のレッテルが貼られてきたかを考えると、様々な言論活動や民族運動がほとんどこれに該当するとされてきた事は明白です。このような記述は、尋問、監視などの項目にも散見され、その適用の仕方によっては、今回の改訂の別の側面が浮かび出てきます。
改訂刑事訴訟法をいかに運用していくか、公安機関・裁判所、・検察など各司法機関の姿勢が問われます。特に居住監視の規定が乱用されないかは、多くの国民の関心事になっています。今後、親法律に対する実施細則がいかに整備されるのか、注視する必要がありそうです。

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