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 第531回人民元の国際化−その1−

(2012年08月27日)

このところ、「人民元の国際化」と言う言葉がしばしば目に留まるようになりました。例えば、4月3日に中国証券監督管理委員会はQFII(適格外国機関投資家)の海外での人民元建て投資枠を従来より500億ドル増やして800億ドルとする、と発表しました。また、2011年12月16日に、総枠200億元内で、一定の資格を満たした場合、証券会社などが香港の子会社をテストケースとして、香港で調達した人民元資金を許可された限度額内で国内証券投資業務に向けることをみとめたRQFII(基金管理会社・証券会社人民元適格外国機関投資家国内証券投資試行規則)の投資限度も500億元増やしました。
これらの措置は、一方では、2011年以来の金融引き締めの影響で株式投資が低迷し、2000年の水準まで下がったことに歯止めをかける目的があり、国外の機関投資家の投資割合を高める事で、個人投資家が多くて動揺しやすい国内市場を落ち着かせ、市場への信頼を高めよう、というものであり、人民元の国際化に向けても追い風になります。
為替レートに関する政策も進展を見せています。人民元は2007年5月に変動幅を0.3%から0.5%へ拡大しましたが、2008年7月には輸出産業保護を目的に一時的に対ドル相場を固定、2010年6月から再度弾力的運用に回帰していました。
2012年4月14日、中国人民銀行は「人民元の1日の上下変動幅が0.5%だったのを16日から1%に拡大する」と発表しました。その理由は「為替市場が成熟して相場が実勢に近くなり、急激な元高は起こらないだろう」というもので、実際、初日は、朝方の設定中間値1ドル6.296元に対し、終値は6.303元と大方の予想に反してやや下落しました。ただ、その後の5月3日からの米中戦略対話前にはアメリカの圧力をかわすため人民元高が意図的に演出されており、管理されたレート、と言う点では、国際化にまだ相当の距離があることも実感させられました。
客観的状況から観察すれば、2012年第一四半期の実質成長率は8.1%と低迷、貿易黒字も外貨準備高も減少局面に入っており、ヨーロッパなどの不況で海外からの資金流入も止まりつつあったことが急激な変化を阻止しているわけで、中国政府の対応は良いチャンスを捉えたものとも言えましょう。

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