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 第532回人民元の国際化−その2−

(2012年09月03日)

投資資金の流入を促進する改革としては、銀行による為替取引持ち高規制も緩和されました。元上昇圧力回避のため銀行の一日の為替取引を元の買い持ちで終えることを禁止していたのを一定範囲認めることにしたのです。こういった改革姿勢は更に貸出金利を自由化し、金利の自主決定権を拡大しよう、という議論も呼んでいます。ただ、貸出金利の自由化は預金者保護のセーフティネットが整備されていなくてはならず、また、これまで3%の利ざやが確保されていた銀行側がおいそれと話しに乗るかも問題です。
中国政府が人民元の国際化を強く意識したきっかけは2008年秋のリーマンショックで、米ドルに頼りすぎるリスクに気がつき、内外企業に人民元決済を促し始めました。その結果、2009年には36億元だったのが2011年には2兆元と、中国貿易全体の1割に達しています。ただ、元の国外での流通が制限されているため外国企業は元を手に入れにくく、これを緩和するために、各国と互いの通貨を一定枠内で交換し合う通貨交換協定締結が推進されました。これにより外国企業は自国の銀行から人民元の調達が可能になります。
2012年3月22日、中国はオーストラリアと3年を期限とする2000億元のスワップ協定を結びました。すでに韓国、ニュージーランド、シンガポールなど世界17カ国と協定を結んでおり、韓国とは3600億元に達していますが、「欧米主要先進国とは初めてだ、人民元国際化の証だ」と言う論調も垣間見えました。
中国は貿易の支払いに元を使うよう奨励する一方、投機につながる株式投資などの資本取引には慎重な態度を崩していません。まず、香港に人民元建て株式債券市場を作り、徐々に取引を拡大する意向です。これに対しイギリスは2011年に王岐山副首相とロンドンオフショア市場歓迎の共同声明を発表、ロンドン市場での人民元取引の可能性を模索しています。4月18日にはイギリス大手銀行HSBCが人民元建て債権をロンドンで発行すると発表。中国や香港以外での人民元建て債権発行額は3年以内に1兆元に達すると予測しています。同様の動きはシンガポールやアメリカでも始まっています。
6月1日、円と元の直接取引が東京・上海で始まりました。ドルを介さない分、取引コストが軽減されます。元のドル依存からの脱却が進み、更なる国際化への一歩と言えましょう。

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