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 第595回 中国と朝鮮半島—その1—

(2013年11月11日)

朝鮮半島を巡る東アジア情勢が重大な転機に差し掛かっています。北朝鮮問題、FTA絡みのつばぜり合い、中韓と日本の領土問題、アメリカのアジア回帰と中国の海洋政策などが複雑に絡み合っているのです。
2013年2月、北朝鮮は3回目の核実験を行い、国際社会に衝撃を与えました。3月30日には「韓国と戦時体制に入った」と宣言、開城工業団地の閉鎖をほのめかしました。こうした動きに対し、2011年以降、北朝鮮の核開発を抑止するため国連に同調していた中国は直ちに税関検査の厳格化など一連の制裁措置を講じ、韓国も断固たる決意を表明、アメリカも米韓軍事演習に核搭載可能なB-2爆撃機を参加させるなど、一気に緊張が高まりました。こうした北朝鮮の挑発は「非核化を前提とした六者協議ではなく、アメリカとの直接交渉を引き出そうという瀬戸際外交だ」と説明されていますが、朝鮮半島の平和維持が国益に直結すると捉えていた中国には大きなストレスとなり、硬軟取り混ぜた対応を迫られています。
5月、中国は訪中した崔竜海朝鮮人民軍総政治局長に対し、核保有国として認めない旨を伝え、韓国も「開城工業団地の閉鎖はむしろ北朝鮮にダメージが大きい」として、妥協せずに中国との関係を強化、ともに非核化を推進する姿勢を示しました。中韓のこのような姿勢は北朝鮮を孤立させ、逆に日本との関係改善機運が生じる可能性も取りざたされましたが、日韓の分裂と日朝の接近をアメリカが望むはずもなく、また、韓国も米中のはざまで微妙なバランス感覚が求められ、また、中国側も、中韓関係の緊密化が進めば進むほど脱北者への対応など難しい課題に直面します。 
7月27日に平壌で開催された朝鮮戦争休戦60年記念行事に、中国は政治局員常務委員ではないが国家副主席という要職にある李源潮を派遣、非核化への努力を要請、また、6月下旬の中韓首脳会談時の記者会見では、習近平国家主席が「最終的には自主的に平和統一を実現する」事への期待を表明するに至りました。
その後、開城工業団地については8月に北朝鮮と韓国が再開で合意、9月に北京で開催された六者協議10周年記念シンポジウムでは、中国が協議再開への期待感を示しましたが、北朝鮮は前提条件を付けることを拒否、日米韓も様子見を決め込んでいます。

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