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 第602回 上海自由貿易試験区

(2014年01月14日)

2013年2月に浦東新区に自由貿易試験区を、と言う構想を明らかにしたのは楊雄市長。韓正市委員会書記(中共中央政治局委員)もアジア・太平洋地域を視野に入れた、世界に最も近い自由貿易区になることを示唆しました。近年、世界ではTPP、TTIP、BITなど自由貿易へ向けた動きが活発になっていて、貿易や投資の一層の自由化、中でもサービス貿易の自由化や公平な競争ルールの確立が主要なテーマになっており、中国経済の発展もこれらのテーマを避けては通れません。また、国際的な新しい競争ルール確立のプロセスで中国が一定の発言権を確保することも喫緊の課題になっています。
同年7月3日、国務院常務会議で、総面積は28.78㎢、北から順に外高橋保税物流区、上海市外高橋保税区、上海浦東空港総合保税区、洋山保税港区(陸域・島域)の4保税区を含む上海自由貿易試験区設立に関する草案が原則的に承認されました。更に8月30日には、同試験区内で暫定的に関連法律規定を調整する行政権を国務院に与える決定が全人代常務委員会で承認され、外資企業法・中外合資経営企業法・中外合作経営企業法・文物保護法などの関連規定の同区内での実施を3年間ストップすることになりました。そして9月29日、中国(上海)自由貿易区が正式にスタートしたのです。
現在までに明らかになっているその主な内容には、民間資本銀行と外資系金融機関との合弁や中国の銀行による同区内でのオフショア業務の解禁、外資系企業によるネットサービスやゲーム機販売、外資系企業の信用調査会社・娯楽施設・医療機関の設立、外資系企業の旅行・教育関係での合弁会社設立や海運・人材開発などでの合弁出資比率の緩和など18業種にわたる規制緩和が含まれており、また、16業種190項目の禁止・制限リスト以外は全て届け出だけでよいという、世界的に主流となっているネガティブリスト方式への移行も朗報です。
ただ、これらの項目が実際にどういう手段で具体化されるかについては、その影響が大きいだけに政府も慎重で、それぞれの細則が手際よく整備されるのかも気がかりです。
10月8日の企業登録申請受け付け初日以降、応募状況は順調な滑り出しを見せているものの、発足式典に李克強首相の出席が無かったことから政府内外の既得権益を擁する勢力からの抵抗の激しさも取り沙汰されており、先行きはなお予断を許しません。 

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