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 第617回 注音字母誕生百周年

(2014年04月28日)

2013年は、中国語の発音表記方法の一つ、注音字母が誕生して百周年。同年2月2日の人民日報はその先駆的な役割について詳しい紹介を載せました。同記事では、「1913年に当時の教育部が『読音統一会』を招集し、魯迅らの提議を踏まえて注音字母を制定し、漢字のルビに使用したこと」、しかし、「漢字の筆画の一部を利用したため世界に通用せず、1958年に全人代で採択されたローマ字表記による「漢語ピンイン方案」にその席を譲ったこと」などが記されています。注音字母は個々の発音表記では、ピンイン字母より正確と言える部分もありますが、ローマ字を使っていないという特殊性が普及の壁になりました。また、その過渡的な産物として、ローマ字で表記された「国語ローマ字」や「ラテン化新文字」の存在にも言及しています。
中国語の発音表記方法については、国外で考案されたものもあり、その意味で真に先駆的役割を果たしたのはウエード式でしょう。中国駐在のイギリス公使だったトーマス・ウエード(後にケンブリッジ大学教授)が19.C後半に考案した、ローマ字による方式で、日本でも普及し、かの諸橋轍次氏の大漢和辞典も漢字の表記に注音字母と共にウエード式を付しています。その他にはイエール方式が挙げられます。これは第2次大戦中にアメリカの陸軍が使用したもので、台湾でも戦後の一時期、見かけることがありましたが、今は姿を消しています。
中国語に関して、今、問題になっているのが、方言の消失です。2013年7月12日付の記事では、ケレン・パーカー、スティーブ・ハンセンという二人のアメリカ人が2009年から立ち上げた「郷音苑(Phonemica)」という、中国の方言を記録した音声マップを紹介していますが、「普通話」の普及運動が全国に広がり、「普通話」ができなければ就職もままならないという時代になり、また、多くの子供が両親と共に都会に出てくる中で、方言は急速に失われています。同記事によると、蘇州大学の汪平教授の調査で、蘇州の小2〜高2児童生徒の70%が日常的に「普通話」を使っており、半数以上が蘇州方言で議論や学習ができず、蘇州方言のほうが得意、と言う者は5%のみ、とのこと。「こういった状況は、方言をベースにした劇や民間芸能の存続にも深刻な影響を与えている」と筆者は警告しています。

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