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 第620回 農村に文化を

(2014年05月19日)

都市と農村の結合、都市と農村の格差の是正、農村を農村らしく豊かに、と言う声がこれまでになく高まっている今日、衣食の問題から物質的にも精神的にもより文化的な豊かな暮らしを求める傾向が強まっているのは必然と言えます。これまでの農村と言えば、ともすれば暇があれば麻雀やトランプ、と言った風で、それとともに賭け事に熱中する農民も少なくありませんでした。それはとりもなおさず、精神的・文化的・科学的な欲求を満たす娯楽に欠けていたことの証左でもあります。 
国による従来の農村文化政策は“三下郷”政策(農村に文化・科学技術・ 医療衛生を)に則ったもので、こういった活動は現在も盛んにおこなわれています。例えば2013年春、中国東方演芸集団は山西省各地を巡回公演し、地元の民衆と双方向の交流を繰り広げましたが、こういった演劇歌舞団の巡回公演はその代表と言えましょう。また、政府の方針として従来から力を入れているのが“農家書屋”の建設で、2012年8月に新聞出版総署は「“農家書屋”を5年間で60万か所建設、全国の行政村をほぼカバーし、“農家書屋”プロジェクトが完成した」と宣言しました(調査では農民の使用率は50%を超えているとも)。また、映画などの巡回上映会も長い間、農村では欠かせない娯楽になっており、今も盛んにおこなわれています。2012年9月には、CCTVが24時間放送の“中国郷村之声”というチャンネルをスタートさせましたが、その中には<郷村大戯台>と言ったような文化番組も含まれています。
こうした動きがある一方、文化を与えられるだけでなく、自ら文化の担い手、作り手となり、更には発信しようという動きも盛んになっています。2012年の春節、四川省では4000余りの郷鎮で100万人以上の農民が自ら様々な文化活動に参加しましたし、2013年時点で山東省棗庄市では3000人に一つの劇団と言った活況を呈しています。
特色ある村も各地で出現しています。上海市の金山農民画村に象徴されるような農民による書画も盛んになり、中国農民書画会員はすでに4万名を突破していますし、山西省翼城県では、70人余りの詩人を輩出した村も出現しました。今、各地の農村には続々と“文化礼堂”が設けられて農村文化を育む新たなプラットフォームになりつつあります。それらがそのまま埃をかぶることの無いよう、行政には具体的な実質的サポートが求められています。

三瀦先生のコラム