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 第639回 家庭再構築

(2014年10月06日)

“中国梦”の実現を目指す習近平政権。社会主義の核心的価値観として“富强・民主・文明・和谐・自由・平等・公正・法治・爱国・敬业・诚信・友善”が頻繁にメディアに登場し、中国の街角のあちこちの壁にも掲げられています。
そんな中で、最近登場した注目すべき言葉が“家风”。2014年4月2日の人民日報に『重慶九竜坡区の2000人の小学生が家風を探る』と題する記事が掲載されました。同区第一実験小学校は生徒にアンケート調査を実施、2016人すべてから回答を得ました。質問内容は「自分の家には家風があるか。どんな家風か。どんなやり方をしているか」の3つ。記事によれば緊急家族会議を開き、自分の家の家風は何かを討議した家庭も。結果として白紙回答はゼロ。最も多かったのが中国の伝統的な美徳を示す“诚信”“尊老爱幼”“勤俭节约”“善良”といった項目。“厚德博学”“慎思笃行”“父慈子孝”“兄友弟恭”となると、日本の教育勅語を彷彿とさせます。この他にも“敬业爱岗”“奉献爱心”“与人为善”などが。このアンケート調査の最大の効果は、これによって親たちの自覚が促され、子供に対する教育の責任感が芽生えたことのようです。
最近頻繁に登場するようになった言葉が“修身,齐家,治国,平天下”。例えば、ある記事では「親を養うのは子供の当然の義務で、財産分与だけ受けて、親の老後の面倒は国に任せるなど、とんでもない。家のなかでの責任が明確に履行されれば、社会問題も減る」、また、ある記事では「中国では有給の仕事をしている女性が70%近くで、世界平均の53%をはるかに上回っているが、孔子が『大学』で“一家仁,一国兴仁;一家德,一国兴仁”と述べているように、“敬老、轿子、相夫、善邻”は家や社会の安定に関わる大事で、女性の役割として重視しなければならない」というコンテクストで引用されています。
全国婦人連合会は全国的に“最美家庭”選出活動を行い、133万枚の幸せな家族写真、29万回の“最美家庭”を語る会が催され、100軒の家族が選ばれました。この他各自治体でも家庭内での善行、とりわけ、献身的に親に尽くした人の表彰などが盛んにおこなわれていますが、「モラルの建設は宣伝教育に頼るだけではだめで、各自が自分の生活のなかで自ら考え実行することが大事だ」(2014.5.16人民日報)という指摘を忘れてはなりません。

三瀦先生のコラム