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 第661回 医療における民間活力の導入−その1-

(2015年03月17日)

中国の医療制度改革が大きな転換点を迎えています。そのキーワードは民間活力の導入、即ち民間経営の積極的な育成、医療の市場化・産業化です。民営医療機関は2012年に前年より1000ヶ所、2013年には1500ヶ所増えて11,300ヶ所になりましたが、診察患者数から見ると、公立が90%を超えています。しかも公立側は規模拡大を続け、億人単位で急増しているというのですから、このままでは国の財政が支えきれません。既に第12次5カ年計画でも、2015年に民間医療機関のベッド数やその果たす役割を全体の20%に引き上げることを謳っていますが、これに沿って国務院も「民間でできることはなるべく民間で」と、負債による公立病院のやみくもな規模拡大を厳しく規制する一方、医療サービス市場を一層開放し、民営化を推進する方針を打ち出しました。医療業の対外開放についても、2000年には外資の持ち株比率の上限が70%にまで引き上げられていましたが、本格化は2010年の<民間資本医療機関を一層奨励しリードすることに関する意見>で、条件をクリアした外国資本による国内での独資医療機関開業への試験的な取り組みが始まり、2013年の国務院<健康サービス業の発展促進に関する若干の意見>で更なる拡大が提示されました。“看病难”“看病贵”(治療がなかなか受けられない、治療費が高い)の解消は中国医療の長年の課題。民間医療の導入をその突破口にしようにも、そこには3つの大きな問題が立ちはだかっていました。第一が人材の問題。これまで、医者は就業資格と就業場所が法律で厳しく規定されており、一度公立の職務を離れると元の立場に復帰できないなど、公立と私立の間における人材交流システムが確立されていないため、民間医療機関は“爷爷带着孙子看病,奶奶带着孙女看病”(ジジババが孫を連れて診察する)と揶揄される如く、年寄りと新米の医者ばかり。また、掛け持ちも許されていないので、優秀な医者の往診を頼むこともできませんでした(最近、漸く深圳などで規制が緩和)。次が政策的ネック。いくら民間独資を奨励しても、それを可能にする財政、税制、用地など関連する法律上のサポートが無ければまさに絵に描いた餅。加えて銀行の貸出条件は厳しく、株主からも大きなプレッシャーがかかります。この続きと具体的取り組み事例は次回に。

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