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 第671回 挙国体制の技術革新−その1−

(2015年06月01日)

第664号で<産学共同への取り組み>について書きましたが、“新常態”に甘んじつつも、更なる発展の軌道につなげていくには、産学共同のネタとなる技術革新を生み出す自前の科学技術発展能力が無ければなりません。中国自身が認めているように、中国が持つ根本的な問題は、その経済的なポジションに比し、科学技術研究レベルがあまりに貧弱なことです。宇宙開発やスーパーコンピュータなど一部の分野では、潤沢な資金を持つ軍や国有企業をバックに世界の最先端を行く成果を挙げていますが、一皮むけば、開発投資をしないで出来合いの技術を取り込んだり模倣し、商業テクニックで金を稼ぐことばかり考えていたため、今になって“新常態”を抜け出すエンジンの十分な出力が十分得られない事態に遭遇しています。イノベーション先進国において経済発展に対する科学技術の貢献率が70%以上であるのに比べ、中国のそれはいまだ50%前後で、特許も、近年、申請率は急上昇し、申請数が上位を占める企業が次々と生まれてはいるものの、中身をよく吟味すると、その質や運用方法、データ管理などにおいては様々な問題があり、第664号で述べたような産業化への接続不良も深刻になっています。
2013年の18期3中全会では「イノベーションにおける企業の主体的地位を強化し」「応用型技術研究機構の市場化改革・企業化改革を推進し、国のイノベーション体系を建設する」とし、また、「知財権の運用と保護を強化し、イノベーションのインセンティブメカニズムを整備する」ことも書き込みました。後者については、2014年の4中全会でも知財権制度や科学技術の成果を産業化する体制やシステムの整備を掲げています。また、同年末の中央経済工作会議では、2015年の経済活動の主要任務としてまず経済の安定成長を掲げた上で、その2として新成長ポイントの育成を掲げています。
こう言った流れを受けて、李克強首相は2014年春の全人代で科学技術資源の配置最適化の重要性を指摘、科学技術計画に対する中央財政の管理方式をオープンで統一されたものにすることや、政府が基礎研究・先端技術・重大革新技術研究を重視し、独創的なイノベーションを奨励することなどを表明しました。では、2013年からの以上のような流れの中で、具体的にどういった努力がなされてきたのか、それは次回に。

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