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 第703回 危機管理への取り組み

(2016年1月18日)

一口に危機管理と言っても、自然災害や事故等、幅は広い。安全生産については685-686号で述べたばかりなので、ここでは、テロ対策など国内における危機管理対策を取り上げます。
振り返ると、2015年は、中国の国内危機管理対策が重点的に強化された年であったといえます。2013年11月の18期3中全会で中国国家安全委員会が創設された流れに沿って、ちょうど1年前の2015年1月23日、中共中央政治局は<国家安全戦略綱要>を承認しました。内容の詳細は伝わっていませんが、政治・経済的に危機的状況が迫っている、という認識が根底にあります。同年2月には、<公安改革の若干の問題を全面的に深化させることに関する枠組み意見>が党中央により承認されました。体制・システム・制度にメスを入れるとし、7つの主要任務(①国家安全活動システムの健全化と擁護 ②社会治安対策システムの革新 ③公安行政管理改革の深化 ④法執行権力運用システムの整備 ⑤公安機関管理体制の整備 ⑥人民警察管理制度の健全化 ⑦警務補助人員管理の規範化)を掲げ、100余りの改革を提起しています。この措置には、周永康が権力を欲しいままにした公安部門に抜本的な改革を加え、中央の監督管理下に置く、といった側面もあります。
3月の第12期全人代では、これと連動して「総則」、「反スパイ工作における国家安全機関の職権」、「公民と組織の義務と権利」、「法律責任」、「付則」など5章40条からなる<反スパイ法>が承認されました。この法律が今後、実際にどう解釈され適用されるのか、場合によっては一般社会の自由な言論行動を大きく制約する拠り所になることも危惧されます。
さらに4月に入り、国務院弁公室は<社会治安防御体制建設に関する意見>を通達し、各部門に、党の指導の下で社会の治安体制を強化するよう訴えました。こういった動きと平行して草案の審議が進められていた新しい「国家安全法」(旧法は1993年成立)が7月1日、全人代常務委員会を通過して施行され、これを受けて9日には国防大学で「中国国家安全保障問題研究センター」の除幕式が行われました。2015年12月には、「テロ活動組織と人員の認定」、「安全警備」、「情報」、「対応処置」、「国際協力」など10章からなる<反テロリズム法>も全人代常務委員会を通過しました。こういった一連の法整備の動きは、中国が内外共に厳しい状況に直面しつつあることの証左でもあります。

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