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 第七十三回  遊牧民の定住化

 昨年春、北方地方は砂嵐に12回も見舞われ、回数、程度とも年々ひどくなる一方です。2003年春には、黄河のほとり蘭州でここ半年の水量が例年の半分あまりに 減り、過去半世紀最低を記録しました。地球温暖化の影響はさておき、最大の課題は人為的要因にあるといえましょう。中国西北部は20世紀の間に人口が1400万人から1億人に増え、中国科学院植物研究所首席研究員の蒋高明氏によれば、例えば内モンゴル 自治区の錫林郭勒盟では、新中国成立時に20万5千人だった人口が現在は91万人に達し、放牧数も160万頭から300万頭に急増していて、西北地区の放牧地の草原全体では、負担可能能力を50%から120%もオーバ−しているとのことです(2003.2.21人民 日報)。
毎年200万へクタ−ルにも及ぶ草原の退化を解決すべく、政府は全力を挙げて"退牧返草"(放牧をやめて草原を再生)と"生態移民"(生態環境保護のための住民立ち退き)を推進し、遊牧民の定住化を積極的に奨励しています。全国の草原の22%を占め る内モンゴルでは、草原の過半数が劣化し、2000年から<天然の草原の保護再生、放牧の禁止と畜舎飼育>プロジェクトがスタ−ト。甘粛省甘南チベット族自治州では、遊牧によって州内の3分の一の草原が劣化し保水能力が大幅に低下、黄河の水量に深刻な影響を及ぼし、その対策として6年がかりで2254万ム−の牧草地を建設し、定住化を 進めました。
更に思い切った措置を決めたのが寧夏回族自治区。同地区では"禁、囲、退、種、移" つまり「放牧禁止、柵内飼育、放牧地の草原再生、牧草の栽培、住民移転」に力点を置き、2003年5月1日から放牧を全面的に禁止することにしました。
2002年12月、修訂<草原法>が公布され、2003年3月1日から施行されることになりました。また、2003年2月には、中国工程院から<西北地区水資源配置、生態建設、持続可能な発展戦略研究プロジェクトの成果に関する報告>が公表され、その中で、生態 環境の主要危機として"土地荒漠化"についての分析と対策が詳細に論じられました。
政府の施策に大きな期待が寄せられる一方で、生態移民の弊害に対する蒋高明氏の指摘や、定着によって有史以来の遊牧文化が失われることに対する憂慮の声にも耳を傾けるべきでしょう。

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