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 第779回 日中関係2016年の回顧−その1−

(2017年7月18日)

半年が過ぎたところで、その後の推移を踏まえつつ、毎年恒例の前年(2016年)の日中関係を詳細に分析します。最近の日中関係改善への様々なシグナルと、2016年の厳しい日中関係を対比させると、まず第一に、今年秋の党大会へ向けた綱引きが最も激しかった昨年は、日本への厳しい姿勢が内部批判を封じ込める最大のパフォーマンスの一つであったことが容易に伺えます。しかし、その一方で、日中関係打開のため、どう各ハードルをクリアしていくか、水面下で様々な努力が行われたのも事実です。これを見落とすと大きな判断ミスにつながります。
さて、その厳しかった2016年の日中関係ですが、その間をかろうじて取り持つルートとして活用されたのが日中韓の協議・協力の場でした。2月の三国“教育部長”会議、4月の北極国際協力に関する高級対話、8月の第8回三国外相会議と“文化部長”会議、9月の山東省での三国産業博覧会、10月の“経済貿易部長”会議などがそれにあたりますが、下半期は、北朝鮮問題、韓国の政局の混乱が絡み、こういった面ではブレーキがかかりました。
一方、日中間の政治レベルの直接交流でみると、上半期は政治家レベル・高級官僚・大臣レベルにほぼ止まりました。2月に全人代委員長の張徳紅が参議院代表団と会見、4月には政治局常務委員劉雲山が超党派代表団と会見した後、5月に岸田外相が北京を訪問し、李克強首相、楊潔篪国務委員、王毅外相と会談、王毅外相は日本側に、①<中日共同声明>など4文献の順守、②互いを脅威と見なさず、協力のパートナーとして、中国の発展を認めること、経済交流では平等互恵の着実な取り組みをすること、④地域において対抗意識を持たず、協力してその平和と繁栄に尽力すること、の4点を求めました。下半期に入ると、7月にモンゴルのウランバートルで開催された第11回ASEM(アジア欧州会合)首脳会合で安倍首相と李克強首相が会見、李克強首相は「日中関係は改善に向かっているものの、速度が鈍い」との見解を示し、対話の継続を呼びかけました。翌8月には王毅外相が三国外相会議出席のため日本を訪問した際に安倍首相とも会談し、一方、李克強首相は日中高級政治対話出席で北京を訪れた谷内正太郎国家安全保障局長と会見、2017年(日中国交正常化45周年)、2018年(日中平和条約締結40周年)を日中関係改善の契機としたい、という提案をしました。

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