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 第792回 国有企業の行方*その2*

(2017年11月2日)

2017年4月に政府が公表した<国有企業と国有資本に対する会計監査を深めることのついての意見>は、監査対象に対する徹底した会計監査の実施と責任者に対する厳しいチェック、責任の追及を掲げ、違反行為に対しては法に基づく厳正な処分をする、としています。
政府はすでに2016年を国有企業改革の新たな出発点として捉え、同年には10項目の試みを行う方針を示しました。すなわち、①董事会の職権の明確化によるガバナンスの強化 ②市場による経営管理者の選任 ③プロマネージャー任用制度の推進 ④報酬の差別化改革 ⑤国有資本投資運営会社の設立 ⑥中央企業の再編 ⑦一部の重要な領域における混合所有制の推進 ⑧混合所有制企業における従業員持ち株制度の導入 ⑨国有企業の情報公開 ⑩国有企業が担っていた社会的機能の分離と歴史的に引き摺ってっている諸問題の解決、がその内容で、2017年はまさにこれらのテーマそれぞれについて具体的な取り組みが始まり、それとともに個々のテーマが抱えている現実的課題も浮き彫りになりつつあると言えましょう。
既述の混合所有制は、お題目は立派ですが、実践段階では大きな問題に突き当たっています。まず第一にその実践が下位レベルの国有企業に止まっていること、また、国と民間の持ち株比率に厳しい限定があり、民間資本は、資金提供はするものの十分な発言権が与えられていませんし、提供した資産に対する保障も上十分です。これでは、積極的な参加意欲が湧くはずもなく、政府に恩を着せることで別の面での権益を図る、という腐敗の温床にもなりかねません。
国有企業改革は、上述の10項目の①〜④にあるような内部改革も重要なテーマで、国務院が5つの主要な措置を提示した、2016年5月の<中央企業スリム化本格改革活動プラン>は、組織の簡素化、特に管理者層のランクを3〜4ランクに圧縮し、法人の数も20%ほど削減することを謳っていますが、結局のところ、国有企業改革のキーポイントは、如何にして所有権と経営権を合理的に分離させるか、つまり、その企業を相対的に独立した経済実態にするかです。しかし、現実では国有企業に対する党の支配は加速しており、2017年9月の時点では98の中央企業すべての定款に経営に対する党の関与が盛り込まれました。こうした動きは私企業にも広がっており、市場の見えざる手に枷を嵌めることが危惧されています。

三瀦先生のコラム