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第826回 食にまつわる話(1)

(2018年7月5日)

 『舌尖上的中国』が中国の伝統的食文化に新たな光を注いで早5年以上、人民日報と言えばお堅いプロパガンダや経済の話ばかり、と思っている方は意外に感じるかもしれませんが、そこは“民以食为天” のお国柄、食に関する情報量の多さは並大抵ではありません。
宮廷料理は別として、庶民の様々な料理にも、中国では長い歴史があります。宋代は日本の江戸時代のように庶民文化が花開いた時代でもあり、南宋(1127~)初期に書かれた孟元老の『東京夢華録』には開封の街の100種類にも及ぶ様々な食べ物が紹介されています。
2016年1月に『舌尖上的中国』の流れを汲んだ『舌尖上的新年』というドキュメンタリー映画が封切られましたが、注目されたのが、代々受け継がれてきた伝統のある食物、地域の特性を十分に反映した食べ物を紹介する、という趣旨で、中国と言えばギョーザ、であるはずのギョーザも登場しませんでした。また、出来上がった料理よりも、その元となる食材、社会の様式や秩序に大きな影響を与えてきたそれらの製法に重きを置いたことも観衆に深い感銘を与えました。これこそ、日本や韓国の食が世界遺産にリストアップされたのに、中華料理がその選に漏れてきたことへの最大の反省でしょう。
CCTVの『中国味道』という番組の制作に携わった黄岳陽氏は<在中国味道中感受文化自信>と題する一文(2017.2.28人民日報)の中で、「当初、私は、中国の伝統文化に対する認識不足から、グルメにばかり気を取られていました」「しかし、様々な文学作品から食の文化を知り、様々な資料から、ありふれた食品にもシルククロードの歴史が刻まれていること、唐代にはすでにアイスクリームがあり、みんなで食卓を囲んで取り箸を使って食べる風習は宋代から始まったなどということを知りました」と正直に告白し、「私にとってその制作過程は驚き、喜び、賛嘆、誇りに満ちたものでした」と結んでいます。
2016年8月20日付人民日報『半日閒譚』”欄に<品一瓜清凉>(賈飛黄)という文が掲載されました。それによると、スイカの名前は西域に由来し、その名が宋代の詩文に登場していることから、南宋時期にはすでに庶民の食べ物として流通していたようです。明代の李時珍の『本草綱目』にも唐末五代に伝来した、との記載があります。今日、中国の食卓にスイカは欠かせませんが、三国志の英雄たちはまだ口にできなかったということです。

次回は7月12日の更新予定 テーマは<食にまつわる話(2)>です。

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