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第829回 福建省の発展

(2018年7月26日)

 2016年4月に施行された<中国(福建)自由貿易試験区条例>に続き、2018年5月、国務院から<中国(福建)自由貿易試験区改革開放を更に進化させるプランの印刷配布に関する通知>が出されました。中国における自由貿易試験区は2013年7月に上海自由貿易試験区設立が国務院常務会議で承認されたのを皮切りに、その後、広東・天津・福建の三カ所に、更に2016年8月には国務院が遼寧省・浙江省・河南省・湖北省・重慶市・四川省・陝西省に7つの自由貿易試験区を新設することを決定、2017年になって正式に認可され、「1+3+7」と呼ばれる自由貿易試験区の枠組みが成立しました。
こういった動きの中で、今回、福建に関する国の具体的な発展プランが提示されたわけです。福建省の自由貿易試験区については当コラムでも以前簡単に触れましたが、北から福州片区(31.26㎢)・平潭片区(43㎢)・厦門片区(43.78㎢)という3つの片区で構成されています。福建省の自由貿易試験区の持つ役割は、まず第一に台湾との通商拠点であり、最近ではそれに“一帯一路”における海のシルクロードの拠点としての位置づけが大きな意味を持ち始めました。
こうした点を踏まえ、今回の<通知>では、その建設目標に上記2点を掲げた上で、投資条件の一層の緩和、貿易の利便化、ハイレベルのビジネス環境の整備、金融緩和とリスク管理の強化、「インターネット+」などを駆使した行政サービスの強化、先端産業協力システムの推進、海のシルクロード沿線各国との港湾協力の推進などを謳っています。
一方、台湾との両岸経済協力の深化も主要なテーマとして位置づけられており、互いの役割分担を明確にした協力関係を構築して緊密な相互依存関係を創り上げ、台湾との距離をより密接にする意図が垣間見られます。中国政府は一方で海南島(省)の開発に全力を挙げて取り組み始めており、海南を第二の台湾とし、台湾やASEANとの経済交流における一大拠点とすることで、相対的に台湾の東アジア海域における存在感を淡化させ、将来の統一への布石としたい、という意図も感じられます。言うなれば、香港と深圳のこれまでの軌跡をトレースし始めているのかもしれません。福建省は習近平氏が最も長く在任した地方で、浙江人脈とともにその権力基盤の中心となっている点からも、今後の動きが注目されます。

次回は8月2日の更新予定 テーマは<考古学この1年>です。

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