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第840回 中国と海のASEAN

(2018年10月11日)

前アキノ政権が2016年7月にハーグの仲裁裁判所で勝ち取った、南シナ海で中国が主張するいわゆる「九段線」について「根拠がない」という全面的勝訴を棚上げにして対中融和策を進めたフィリピンのドウルテ大統領が2018年8月に公然と中国を非難、注目を浴びました。融和策の見返りに巨額の融資を取り付けるとともに、争点になっていたスカボロー礁近辺での漁船の操業も再開可能にしながら、なぜここにきて態度を変えたのでしょうか。

インドネシアでは、既に詳しく報道されているように、首都のジャカルタと西ジャワ州のバンドンを結ぶ約150キロの高速鉄道が中国側に逆転受注され、日本は涙をのみましたが、その後の進展ははかばかしくなく、いつごろ完成するのかも危ぶまれています。東南アジア全体では最近、中国の鉄道輸出計画に関する芳しくない話題が次々と紹介されています。衝撃的だったのがマレーシアで、2018年5月に就任したマハティール首相は、前ナジブ政権が中国と進めてきた幾つかの大型プロジェクトを中止すると発表、その中には、マレー半島を横断してタイに通じる東海岸鉄道、更にはシンガポールとの間を結ぶ高速鉄道の建設も含まれていましす。理由は巨額の債務削減です。
鉄道問題では、このほか、タイやミャンマーでも中国一辺倒にブレーキをかけるような動きが報じられています。海のASEANでは、ブルネイが2017年に、同国の石油・天然ガス以外の90%以上の貨物の輸出入を扱うムアラ港のコンテナ取り扱いを中国企業の運営に委ねる協定に調印、<ブルネイ-広西経済回廊>プロジェクトが始動しましたが、ここでも中国一辺倒にならないよう、慎重な配慮がなされています。
日本との関係でみると、2018年7月、インドネシアはJICAから南シナ海南端にある離島への支援を受ける協定に調印、また、ブルネイを5月に訪問した自衛艦伊勢には、同国国王も乗艦し、それぞれバランスを取っています。こういった海のASEAN諸国の動きは、中国と敵対しようというものではなく、自立性を保持しようというもので。マレーシアにしてもフィリピンにしても、また、インドネシアやブルネイにしても、中国との関係を重視し、一帯一路の海のシルクロードというプロジェクトは前向きに評価しています。中国側も、トランプ政権との角逐もあって、孤立を避けるソフトな対応が目立っています。

次回は10月18日の更新予定 テーマは<文化産業振興>です。

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